セブンスドラゴン2020・ノベル

チャプターEX01 『アオイのくせにナマイキだ! その@・Aパート』
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BGM:セブンスドラゴン2020「都庁の夜明け」(サントラDisk:1・09)




 俺様、いまヒジョーにシアワセなのだ。

 この新しい寝床である”おふとん”というのはナカナカ快適で、地面が柔らかくてもふもふする。そしてこの身体の上から掛けている布、”かけぶーとん”というのがこれまた実に良い。ほどほどに暖かくてヌクヌクしており、昨日はもうバッチリのぐっすりで眠れたぞ。

 昨日、シンジクトチョーに帰ってきたのは夜暗くなってからだったんだが、トチョーに着いた頃にはやけに眠くてなー、どうやって寝床に潜り込んだのか、正直あんまり覚えてないんだ。

 う〜ん、確か…シブヤの帰りは車の座席がぎゅうぎゅうで全員は座れないから、俺様だけ屋根に乗ってきたんだったな。速くて風がすごくてスゲー面白かったんだが〜、途中で二回くらい落ちた…かな? 痛かったような気もするんだが、もう途中から半分くらい寝てたんだよな。到着してからアオイが何か言ってた気がするけど、その辺はちっとも覚えてない。

 まあいいや。
 とにかく目が覚めたらこの寝床に居た。そしたらヌクヌクだった、…そういうわけなんだ。


 しかし人間どもめ! キサマらやるな! なんとも素晴らしい寝床じゃあないか! 竜である俺達は岩石や平原などの自然環境で寝るのが当然だったから、こんな見事な寝床なんて初めてなのだ。人間など愚鈍(ぐどん)で矮小(わいしょう)な生物だと侮(あなど)っていたが、この”おふとん”に関しては驚嘆せざるを得ない。なるほど、愚鈍には愚鈍なりの知恵があるんだな。俺様また賢くなったぞ。

 ここまで素晴らしいと知っていれば、昨日もおふとんを利用したというのに! それを立ち上がれないから床で寝てたなどと…なんとモッタイナイ事をしたのだ、俺様は。


 おお! そうだ!
 俺様とてもひらめいたぞ! 昨日の分を取り返すべく、俺様はこれからずっと”おふとん”に入っていよう!

 こんなにヌクヌクした心地よい場所を毎回確保するのは困難かもしれんからな。この部屋という巣穴に明日も居るとは限らないわけだし、これが一度きりの使用だとするなら、出てしまうのはあまりに勿体(もったい)なさすぎる。

 俺様は心に決めたぞ。もうここから出ないのだ。


「せんぱーい、起きてますか〜?」
「…うぬ!」
 そんな事をむにゃむにゃと考えていると、扉を軽く叩く音とアオイの声が届いた。
 別に部下ごときに返事をしてやる事などないのだが、起きているのに睡眠していると勘違いされるのは俺の誇り的に不本意なので、仕方なく答えてやった。

「…俺様、睡眠中でヌクヌクだ」
「ああ、起きてましたか。…失礼しま〜…、って、電灯つけないんですか?」
「デントウってなんだ?」
 巣穴…じゃなかった、部屋の入り口の扉を開けて入ってくる気配。それと共に明かりが灯され、部屋全体が明るくなるのを感じた。なるほど、デントウとは明かりの事か。

 この部屋という巣穴は太陽の日差しが射さない場所なのだが、壁面に付いている”すいっち”というのを押すとその瞬間に明るくなるという不思議な仕掛けがある。アオイのヤツはそれを活用して部屋を明るくしたようだ。

 昨日の俺様はそういうの知らなかったから、突然明るくなったのに大変驚いて、チビの前で手ひどい醜態(しゅうたい)を晒(さら)したものだが、ククク…、愚かなる人間どもよ! この竜王たる俺様が何度も同じ手で驚くなどと思わない事だ!
 …しかし不思議な装置だな。正直言うとまだちょっと怖いな。


「あれ? 先輩まだ眠たいですか?? もう十時過ぎですけど」
「じゅうじ?? なんだか良く分らないがアオイよ、俺様は別に眠くないが、いまヌクヌクなのだ」

 近寄りながら問うアオイ。俺様はかけぶーとんから頭部だけを出し、亀の首のように顔だけをにょっきりと向ける。するとそこには昨日よりも元気そうなアオイの姿があった。見た目は昨日と変わらず、桃色の髪に緑色の布を身体に装着しており、状況を理解できていなさそうな顔でコチラを覗き込んでいる。

「あ、もしかして体調が優(すぐ)れませんか? 昨日、帝竜とも戦ってたそうですし…」
「いや、ぜんぜん、まったく、これっぽっちも優れてるぞ?」

 うむ。昨日はそれなりに戦ったが、この俺…というかユカリの身体の調子はまったく問題がないようだ。特にどこか痛いわけじゃないし、動かない場所も無い。俺は試しにおふとんの中でもぞもぞと適当に動いてみるが、やはりどこにも異常はない。
 …ぬう、虫野郎に何度か体当たりを食らって盛大に血とか出た気はするんだが、あれくらいで死なないとは、人間っていうのは意外に頑強なんだな。今更だがそう思う。

 だってヤツの体当たりを受けたとき、俺様の近くにあった岩石は砕けてたし、金属はひしゃげていたもんな。下級竜なら数十匹まとめて死んでもありあまる威力だと思ったんだがなぁ…。つまりあれか? ユカリの身体が丈夫(じょうぶ)って事か? それとも人間そのものが丈夫なのか? 前に人間の戦士と戦ったときは容易(たやす)く死んでたような気がしたんだがな。うぬ、固い人間と柔らかい人間がいるのもしれないな? 不思議だな。

 俺様がそのように人間の強度について思案にふけっていると、アオイがまた聞いてきた。


「…その感じだと元気そうですね。安心しました」
「んむ」

「じゃあ先輩、起きられます?」
「やだ」

 俺様はアオイの問いに迷う事無く即答してやった。だって、俺様はおふとんで暮らすと決めたのだ。出ないという選択を自らの魂に刻(きざ)み込んだのだ。俺様はヌクヌクのまま生きていく。いくらアオイだろうと、この固い決意を覆(くつがえ)せるものではないと思い知らせるいい機会だ。意地でも出るわけにはいかない。俺様もうヌクヌクがないと生きていけんのだ。

「えー、なんでですかー? 起きましょうよ?」
「ダメだ。俺様はここがいいのだ」

「そんな事言わないで、そこをなんとか」
「俺様の意志は揺るがないのだ」

 クククク…愚かにも困惑の色を見せるアオイは、俺の強い強い決意を目の当たりにして説得を躊躇(ちゅうちょ)している。しかし逆らえまい。たかが部下の一人に過ぎないコイツが、王たる俺の言葉を無碍(むげ)に出来ようハズはないからな。グハハハハハハ!


「…はー、でも〜朝ごはん持って来たんですけど」
「朝…ごはん?」

 なんだ…その甘美な響きは? 俺様は朝という言葉は知っているが、ごはんというモノは初めて聞いた。しかし、俺様の身体はナゼかその言葉に大いに興味をそそられ、満足な抵抗さえできずに魅了されようとしている!

 だ、だが、起きるというのはダメだ。

 俺様はこのおふとんで暮らすと決めた。何があってもここから出ない。ヌクヌクのままで一生過ごすと決めたのだ。そう簡単に出ては竜王の矜持(きょうじ)を曲げる事となる。そんな事は許されない。俺様はいまこの場に踏みとどまり───…

「今日の朝ごはんはですねー、ハチミツジャムを塗ったパンでーす! 先輩こういうの好きだと思って、ひと瓶(びん)いただいて来たんです」
「なん…だと…?」

「ハチミツジャムの…パン…? ハ…チ…ミ…ツ…?」
「はい。ハチミツジャムを塗った甘〜いパンです」

 うわああああああ! こ、この異様な響きはなんだ? 異常なまでの威圧を感じるこの言葉は?!  まさか恐怖? 俺様の身体が震えているだと?
 俺は頂点にまで達しようとしている欲求を解消すべく、おふとんの上でごろごろと回転の限りを尽くす! だが、それだけでは俺の身体が望む期待はしぼまない。

 くっ…、いま俺は欲求と言ったのか? 俺様がハチミツなる言葉に欲を感じているだと? 馬鹿なっ!


 ええい、くそが! いったい俺様はどうしたというのだ? 何に怯えているというのだ? やはり欲求か? 欲求なのか? 理由は分らない。だが、俺の口内に大量の唾(つば)が分泌され、そして急速に空腹の度合いを増してきた。ごはんというのはやはり至高の食料か!!

 しかしハチミツ! それが俺の存在を揺るがす文明開化が待っている気がしてならない!

 ぬおっ! このユカリの身体が勝手に動く! 起きろ起きろと警鐘を鳴らしている! 俺にそれを食せと抗(あらが)い難(がた)い命令を下している!! その重く圧し掛かる何かが俺を絡(から)め取って思考を支配する。ハチミツという単語が身体の中を駆け巡り、俺の脳へと必死に体当たりを仕掛けている!

 馬鹿! やめろ! 得体の知れない食料だぞ? この竜王がそんな不明食料を口にするなど認められるはずがない! 耐えろ! 戸惑うな! 思い出せ! 俺は竜の王だという事を! 俺の誇りはそんなにも軽いモノなのか? 軽んじられてよいものなのか?!


「あれー? 食べませんか? ハチミツさんは甘くておいしいですよ〜? あー、もったいないなー。起きないなら私が食べちゃいますけど、いいですかー?」
「わーーーーダメだー!! 俺様が食べるんだ! 起きるから俺様にハチミツじゃむぱん寄こせーー!!」

 俺は自分の矜持をいきなり捨てた。
 しかし、結果から言えば捨てて正解だった。俺様もうすげーハチミツじゃむぱん大好きだ!














「はむはむ…がっんぐ!」
「ゆっくり食べましょう。パンは逃げませんからね」

「んー。もむもむ…。うぐ…、むは〜む…」
「え、先輩、なんで…泣いてるんですか? お腹でも痛くなりましたか?」

「馬鹿モノ! キサマは何も分っていない! ハチミツの真髄(しんずい)を何も分っていないのだ!」
「ふふ…、そういう事ですか。…じゃあもう一枚、焼いておきます」
「わぁ!」
 素晴らしい!! ハチミツ素晴らしい! 俺様、あまりの美味しさに涙出てきた。俺は今日という日を生涯忘れる事はないだろう。この感動を思い出す度にハチミツを思い出す事だろう。

「さあ、どうぞ。今度はよく噛んで食べましょうね」
「はむぅ! うん、うん…はぐはぐ…」
 俺様の獰猛(どうもう)な顎(あご)が全てを噛み砕く! 恐るべき野獣の牙がそれに食いつき、引きちぎる! あむあむ…もぐもぐ…、ぬお! しまった! アオイが言うには、よく噛んで食べなければいけないらしいぞ。そうだな、そうしよう。よく噛んで食べるのだ。もぐもぐもぐ…。


「はーい、そういうわけで今日はこの都庁の中を探検したいと思います!」
「ぬ! たんけん? もむもむ…んぐっ、はぐ…もぐもぐもぐ…」

「そうです、探検です。今日はムラクモのお仕事はお休みだそうですから、自由にしていていいんですって。昨日は帝竜と戦ったわけですからね、休むのもお仕事だってあの眼鏡の人が…、えーとえーと…、そのナントカさんって人が言ってました」
「なんとかさんって誰だ?」

「いえー、それがさっぱり記憶に残っておりませんので…。眼鏡だけは実に良く覚えてるんですが…うーん、ムラクモのリーダーのナツメさんの秘書さんで、緑頭の人で…、キ…、キ…、そう、キリノさん!」
「不愉快だ!」

「…何がです?」
「むぐむぐ…はぐ…はっへはいふはひひをはな!」
「口にモノを入れたまま喋るのはやめましょうね。なんーにも良い事ないので」


「んぐんぐ…、はむ…はむ…っ! ふむぅ、まあいい! それはともかく探検…か」
 クソ緑はともかく、探検を提案するアオイ。

 そのアオイはというと、俺の後ろに立ちって、”へあぶらし”というイガイガな道具で俺様の髪を均(なら)している。俺様はヤツが何をしようが構わず、必死で口をもくもく動かす作業に没頭しているわけだが、その探検とやらは面白いと思った。

 アオイの話によると、ここの”部屋”という巣穴は俺専用の縄張りだそうで、このトチョーという人間どもの巣穴全体はまだまだデカイそうだ。その辺は俺も知っているぞ。昨日、シブヤに出かける前に巣穴の外から全体を眺めたら、やたらデカかったもんな。きっと山みたいに入り組んでいて様々な巣穴があるだろう。それらを見て回るというのは名案だ。

 んむ? そういえば俺様は一昨日までこのトチョーを占拠(せんきょ)してた張本人…あれ? 竜だから張本竜か?? まあ、そういう立場なわけだが…。

 あの時はこの人間の巣穴を占領しただけで、中身まで気に掛けてはいなかったな。部下どもは何匹か入り込んだみたいだったが…、そもそも竜としての俺様の身体には通路が狭すぎて入れなかったしな。


 そもそも、
 なんで俺は自分が入れもしないシンジクトチョーを占拠したんだったかな?



 いま考えるとなんでだろう? 不思議だ…。

 んー? その辺あんまり考えてなかったけど大した理由じゃなかったよな。えーと、屋上というのに着地し易かったから? いや、高いところが面白そうだったんだっけ? 遠くが見えていいなぁ、とか思ってた気もするし…。

 まあ、そんな事は今更どうでもいいよな。うん。


「おし、いいぞ。探検しよう」
「ありがとうございます。…じゃあ、仕度しましょうね。先輩はまだ食べてていいですよ。髪を梳(と)かし終わったら着替えましょうか」
 アオイの嬉しそうな声が耳に届くが、しかしこの”髪”というのは頭に生えてる細くて長いヤツだろ? それを溶かすとは何なのだ?? 溶解するのか? いや、ヤツが使用しているイガイガは、溶解目的には見えないな。アオイのやっている梳かす、というのは髪の一本一本が変な方向へ向いているのを均一にするって事だよな。それは均(なら)すと言うべきじゃないのか? なんで梳かす、なんだ??

 いや、その前にもっと悩むべき事があるな。まず、それを聞いてみるか。

「なー、アオイ。聞いていいか?」
「はい、なんでしょう?」

「この髪っていうのは、一体何のためにあるんだ? うっとーしー気がしてならないんだが…」

 うん。まずはそこだよな。これ自体が謎の部位だ。人間は必ず頭部にこれがある。しかも長さがまちまちで個別に違うのだ。竜で言うところの角かと思ったのだが、角は同じ種族ならほぼ均一の大きさだよな? じゃあ、違うじゃん。

「うーん、…私、いままで生きてて、髪が何のためにあるのかを聞いてきた人に初めて会いました」
「いいから教えろ!」

「あー、でも、先輩に聞かれるんだったら全然違和感がないんですよねー。なんか不思議です」
「どーでもいいから、さっさと教えろよ」
 コイツ、なんか色々と付け加えるようになってきたな。少しナマイキになってきた気がするぞ。俺様が右と言えば右と言い、左と言えば左と言う。それが部下というもののハズだ。…ちぇっ、うーん、まあ少しくらいいけど。…アオイだし。

「ふ・ふ・ふ。お答えしましょう! 髪というのはですね、鎧です! 防御力です! 竜でいうところの鱗です!」
「えー? うろこ〜〜〜?? これがか?」
 俺は振り返りながら疑惑に満ち満ちた不審な視線をアオイへと送る。しかしアオイの顔には余裕の笑みが浮かんでいた。

「先輩はよく竜をモチーフにして考えますので、私もそれと同じように考えてみました。髪の毛は、竜で言うところの鱗と役割が似ています。竜もそうだと思いますが、頭というのはとっても大事ですよね? 頭部を守るために髪の毛は生えているんですよ」

「この細いのがか? 嘘つけ」
「そーです! 一つ一つは細くて弱いですけど、束ねると弾力と柔軟性があって防御力高いんですよ」
 アオイは自分の軽く額を叩く。そして今度は、前髪の上から額を叩く。

「少しだけですけどね。痛さが和らぐんです」
 そのように得意げに話すアオイを真似して、俺様も同じようにやってみた。

「うーん。大差ない気がするんだが…」
 あんまりどころか、全然変わらないような気がするなぁ。でもちゃんと防御力がある気もする。ビミョーだ。

「ぬぬぬ…、つまりあれか? 敵に攻撃された時は頭部で受ければ防げるわけだな?」
「ダ、ダメですよ! それ怪我じゃ済みません! 防御力はほんのちょっとしか無いので、そういう危ない事はお願いですからヤメてください」
 苦笑いを浮かべたアオイは、気分を切り替えたように一指し指をピンとたてて解説を続けた。

「しかしですね、女の子には特に重要なんですよ? 綺麗で美しい髪はみんなの憧(あこが)れです。先輩みたいに艶やかに黒くて長くて綺麗なのはすっごい素敵で羨(うらや)ましいんですよ〜?」
「んむぅ〜…」

 …イ、イマイチよく分らないが、つまりは弱いながらも若干(じゃっかん)の防御機能を有しており、メスの個体優越を決める際の部位でもある、という事なのか。しかも長い方が優位に立つという事か。ふぬー…。

 だとすると、メスボスの…ナツメとかいうヤツも髪が長いのかもしれんな。昨日会った時は頭部なんてあんまり見てなかったが、ヤツはボスなのだからきっと長いハズだ。優位に立っているのだから必然的にそうなる。

 アオイは〜…そんなには長くないから、アオイより髪が長い俺の部下なのは当然で、そうなるとチビはさらに短いからその下の格付けって事か。俺様はてっきり乳房の大きさで順位が決まるのだと思ってたが、長さでも決まるのか。ふむー、人間のメスは奥深いな。

「俺様はつまり、メスとして優位だという事なのか?」
「う〜ん、多少の好みの差もあると思いますけど、これだけ綺麗なら魅力的だと思います。私はそう思うって程度ですけどね」

 んむ〜。なるほどな…。ユカリの身体は魅力的なのか。つまり今の俺様もメスとして優れているという事なんだな。ふーん。







 あれ? 待てよ??





 それよりも一番の問題があるんじゃねーか?








 とんでもない問題があるような気がしてきたぞ?









 俺様はいまユカリの身体だよな? ユカリは間違いなくメスだよな?

 あれ? もしかして俺様…、いまメス??
 そうなるよな。そうだもんな。





 え、あれ? そうだとすると…、









 発 情 期 が 来 た ら タ マ ゴ と か 生 ま な き ゃ な ら ん の か ? 







 ぎゃああああああーっ!
 ちょっと待ってくれ! 馬鹿な! 俺様は元々オスだったハズだぞ!?

「アオイー!! 俺様いまメスなのか? 間違いなくメスか?!」
「い、いまも何も…、先輩はとっても可愛らしい女の子ですよ?」

「そう…か…」

 絶望した。いまは俺様はユカリであって、ユカリは確実にメスなわけで、メスはタマゴを生むのが役目なのだ…。
 ま、まさかこの俺様が…。


「うぬぬぬぬぬぬぬ…、アオイ、もう一つ聞きたいんだが…」
「はい、なんでもござれー」

「…人間の発情期は、いつなのだ??」
「はい?」

 俺様、もうすっかり涙目だったのだ。








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