ティータとアガット ファイナルブレイク!

その3 『冗談じゃない!』
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BGM:FC「奴を逃がすな!」(サントラ1・32)




────ルーアン市・遊撃士協会 2階

「クルツ! おい、起きろクルツ!! クソッ! なんで起きねぇんだ!!」
 アガット先輩がいまだ倒れたままの、昏睡こんすいしたままのクルツ先輩の襟首えりくびつかんで起こそうとしてるんですけど…、どういうわけかクルツ先輩は起きる気配もないっス。いくらオアネラのキスをくららったからって、…そんなに起きないものなんでしょうか? 

「……ちくしょう……。そういう…事かよ…。」
 アガット先輩が苦々しい表情で歯を食いしばります。見ているだけで恐怖してしまうほど鬼気迫ききせまる表情ですが…、そういう事って……どういう事??
 ちょっと…、いや、かなり怖いけど、僕は勇気を出して聞いてみる事にした。

「アガットせんぱい…、なにがそういう事なんスか??」
「話はあとだ! ついて来いっ!!」
 そう叫ぶと、先輩はそのまま物凄い勢いで階段を駆け下りて出口へ! 僕は呼ばれるまま、頭からっぽにして懸命けんめいにその背中を追う。先輩は街の出口とは逆、港へと向かうようだ。そこにあるのは…、シャムシール団をとららえてある仮拘置所かりこうちしょだ!

 えっ! ティータちゃんを先に助けるんじゃないの!?
 アガット先輩はティータちゃんよりも、街の安全を優先したっていう事??

 確かにそれは大切な事だ。
 もしかしたら、逆上したシャムシール団が街の人達を無差別に襲うかもしれない。そんな事させるわけにはいかない!


 ………………………いかないけど…、

 だけど、そうかもしれないけど、それは正しい判断なのかもしれないけどっ!
 それでも!

 …それでもさぁ、先輩にはティータちゃんを優先して欲しいなぁ、と思う気持ちが僕のどこかにあった。

 ヒドい女にだまされてとらわれた彼女は、きっと心細い思いをしているんじゃないかなぁ。そんな気持ちで先輩を待っているだろう事を考えると、どうしてもそう思えてしまう。街だって大切だよ? 比べられないものだよ? そうなんだけどね、それはわかるんだけど…。
 だから僕は、先輩の背中を必死に追いながら、なにか釈然しゃくぜんとしない気持ちでいた。
 だから僕は、我慢がまんできずにそれを口にした。

「アガット先輩! シャムシール団は僕がなんとかするっス! だから、先輩はティータちゃ───」
「心配するな! 俺は冷静だ!」

「───は?」
 先輩から返ってきた答えは、まったく会話として成り立ってない。

「いいから黙ってついて来い!」
「は、はぁ…。」
 なんだかよく分からない。ちっとも納得できない。
 しかしながら先輩を見ていると、確かに焦ってはいるようだけど取り乱しているようには見えないえない。さっき協会支部の2階で、そういう事か、って言ってたけど、それと関係あるのだろうか?

 程なく、港の倉庫街にある仮拘置所へとたどり着く僕達。
 警戒しつつ、シャムシール団が捕らえられている15番倉庫と歩み寄る。

 重々しい倉庫の扉をギリギリうならせながらも慎重しんちょうに、細心の注意を払いながら開けると、そこには…。



 トランプを手に持ち、ビックリした様子でこちらへ振り返るシャムシール団がいた。
 車座くるまざすわって、とってもなごんでいる。


「うわぁ! な、なんだ…遊撃士さんか、驚かせないで下さいよ。…なんか、俺達に用ですか?」
 円になって座り、トランプとにらめっこしていたシャムシール団、その一人がビックリした顔で聞いてきた。そして残りの3人もこちらに気づくと、声を掛けてくる。

「なんだ〜、ビックリした。…でも、あの恐ろしい女じゃなくて良かった〜。」
「あれ? もしかして俺達が脱獄しないかって見に来たの? いや、あの女が外にいるなら、ここの方が安全でしょ? あ、そのカードもらいっ!」
「うおおおおおおお! そのカードはっ! チ、チクショー!」
 …などと口をそろえてフレンドリーに話す一味。もちろん牢屋の鍵も開いておらず、彼らも脱獄などする気配すらない。…っていうか、何でそんなに楽しそうにトランプしてるんだよっ! 調子狂うなぁ…。

 あれ? オアネラの手紙には、鍵を開けておいたって書いてなかった??
 これって、どういう事?

「フン…。やっぱりな、そうだと思ったぜ。」
 すると、アガット先輩は何か確信めいたようにそうつぶやいたっス。僕には何がなんだかチンプンカンプン。だけど先輩はまた駆け出して、僕には何にも説明してくれません。いい加減に話してくれればいいのに!

 ねえ、どういう事か、わかります??



モチロンわかったっス!   ・   正直…サッパリわからないっス!








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