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「おい、待て! エリカ!! お、落ち着け! そんなモン当たったら死ぬだろうがっ! 俺を殺す気かっ!!」 慌てふためいたアガット先輩に、 「…うちのティータに手を出すような犯罪者に情けなんてかけると思う? 巨大な導力砲をぶっ放しているのはエリカ博士、ティータちゃんのお母さんだ。いつの間にやってきたのかは知らないけど、ともかくご本人のようです。 しかしその目は 連続して撃ちだされた砲撃は、夜の 「待てっ! だから待てって! 俺が何をしたってんだ! 今回は何もしてねえ! …いや、今回というか、何も泣かせるような事は断じてしてない!」 「はぁん? 泣かせる? うちの娘をその毒牙にかけておいて、泣かせた程度で済むと思ってんの? ケダモノがっ!」 「お、おい、そりゃあティータがリベル=アークで使ってたヤツじゃねえかっ! トロイメライを破壊するような砲弾だぞ!? 人に向けて撃つんじゃねえ!」 「私が狙っているのは人じゃないわ。ただの鬼畜、…ケダモノよ。安心して 光輝く破壊の砲撃がアガット先輩を狙う! 転がって避けた先輩の後ろ、夜の海に着弾したそれは、またもや激しい爆裂を起こし、先輩の背丈の2倍以上もの大きな水柱を上げた。 「待てっ! いくらなんでも威力上げすぎだろ! 調整とか間違ってるんじゃねえのか!? やめとけっ! 暴発するぞ!」 「あんたが先に死ねばそれでいいのよ。ククク…、観念するのね。」 夜の闇を切り裂いて、導力灯の輝きさえも え? 止めないのかって? 無茶言うんじゃないっス!! あんなのどうやって止めるんスか!? 事の始まりは、ほんのついさっき…。 オアネラとの戦いで、僕の善戦 で、今の状況になったわけです。 いや、ほんとにいまさっきの話なんス。理由はさっぱり不明ですが、どう考えてもティータちゃんがらみ。しかも、毒牙にかけたとか言ってたから、相当の事をしちゃったんだと思う。相当の事をやっちゃったんだと思う。…先輩、僕が言うのもナンですけど、少女に手を出したらいけないと思うよ? 越えてはいけない一線は越えちゃいかんっス。 「いい? 宿に寝てるティータが裸で寝てたのよっ!! しかも起こそうとしても起きない! アンタ、薬で眠らせて手を出したわね!!」 「い、いや、いや待て! そりゃあ違う! ティータが裸なのにはな、深い事情があってだな!」 「深いって何がよ! 何がどういう事情だと、ティータが全裸だっていうのよ! この変態っ!!」 またしても放たれる出力最大の導力砲、それは大きく外れて遊撃士協会の看板をかすめて星空へと飛んでいった。焼け 入り口にはジャンさんが顔だけを出して 「それだけならアンタを疑いはしなかった。だけど!! ベッド近くにはアンタの遊撃士手帳! そして…、そして!! どういうわけか男モノのパンツまで落ちてた!! これが犯罪でなくて何なのよ!」 「ば、馬鹿言え! 俺は遊撃士手帳なんざ落としてねえ! ほら、ここに───、あ、あれ?」 アガット先輩は必死に 「あるはずないじゃない! アンタの手帳はここにあるわ! 犯罪の決定的な証拠としてね。これで罪を認めて、心置きなく死ねるでしょ? まずはその下品な下半身から焼却してやるわ。」 「お、おいっ! 待てって!」 さきほどまで歩くのさえやっとだったハズのアガット先輩のどこにあんな余力があるのか、いつも以上に元気な様子で街の中を逃げ回る。しかし、それ以上にパワフルな怒りに満ち満ちたエリカ博士は、あらゆる障害物を破壊してアガット先輩へと攻撃を続ける。 うう…、これは、どう考えてもオアネラの 僕は倉庫街の方へ逃げていったアガット先輩と猛追するエリカ博士の背中を見送ると、急いでジャンさんの下へと駆け寄った。 「ジャ、ジャンさん! 早く止めないと! どうしたらいいんスか!? どうしたら止められるんスか!?」 「ど、どうするって言われてもっ! いっ! アガット達がこっちに来た!」 「うわあああああああ! 先輩! こっち来ないで! 来ないでえええ!」 事もあろうに、アガット先輩は遊撃士協会へと逃げ込んできた。それで壊れたままの扉から顔を出し、エリカ博士を説得しようと試みている。僕らはすでにカウンター後ろに退避…。マズイ! これはマジでヤバイっス!! 「エリカっ! とにかく話を聞け、俺はいままで海辺にいたんだ! メルツ…、後輩と一緒だったから間違いない! ───おらっ、メルツ! お前こっち来い! 今まで一緒だったって説明しろ!」 「えええええええ! 僕いやっス! この若さで死にたくないっス! せ、せめて彼女が出来てから…。」 「そんな しかし僕らの不毛なやり取りになど関係なく、エリカ博士は僕諸共アガット先輩を狙い、導力砲を連射する! 次々と炸裂する砲弾に、多少なりとも強固な作りになっているハズの遊撃士協会も、雨のような砲撃に耐えられるはずもなく、ボコリボコリと壁に大穴を開けていく! 博士は話を聞く気なんかさらさらない様子。 「ふふん、そこまでのようね、犯罪者アガット=クロスナー! 私の可愛いティータを そう言うと、エリカ博士は導力砲に取り付けられている安全装置をはずして投げ捨てた。……あれ、もしかして今までのって、制御弁が付いた状態であれだけの威力だった…の? 前に僕の師匠、カルナ姐さんから指導された事があるんだけど、導力銃や導力砲には継続して使うための制御弁があって、その枠内で威力を調節したりできるんだって。威力を上げすぎると砲が壊れてしまうし、それ以外にも対人戦闘とかがあった場合でも低出力で使えるように。だから、エリカ博士は今までその範囲での最大威力で砲撃していた。 でも、彼女はその枠を外した。 導力砲が壊れても構わない正真正銘の最大威力で撃つ気でいる…。 つまり 、 本 気 で 死 ね と お っ し ゃ る わ け で す ね ? 「さあ…、死んで 怒りに我を忘れているエリカ博士が悪魔に見せた瞬間だった。僕は本気で死を覚悟したっス! エリカ博士が導力砲を構える。そしてその砲はそれ自体が加熱し、全体が赤く輝いていた。まるで …あ、あれ? でも、なんだか…変…じゃない?? 導力砲がおかしいように見える。普通はしないはずの低い音、 「マズイぞ! ありゃ暴発寸前だ。あの馬鹿、本当に気づいてねぇのか!?」 「や、やっぱりそうなんだっ!」 「やめろ! そのまま撃てば暴発するぞっ! エリカッ! いいかげんに正気に戻れ!」 「博士、それ危ないっス! 早く捨てなきゃ!」 アガット先輩が必死に止めようと叫ぶが、彼女の耳はそれをまったく受け付けない。でも、あれはマズイ! あのまま撃ったら本当に暴発しちゃう! エリカ博士も大怪我どころじゃすまないっス! まだ出力を上げつづけるエリカ博士には、それをやめる気配などなかった。…だけど、正面から飛び込んでも撃たれる方が早い!! そして暴発しちゃう! 「メルツ…、いいか? よく聞け。お前がエリカの気を そうだ。ここは僕がなんとか博士の気を逸らすしかない。 僕が飛び込むより、アガット先輩が飛び込んだ方が成功するはずだ。先輩ならなんとかしてくれる。 しかし、なんと言えば一番いい結果に ええい! こうなったら破れかぶれだ! そして僕はエリカ博士の気を逸らすために、 運命の選択 作戦その1 「アガット先輩はもう裏から逃げたっス!!」 作戦その2 「あ、ティータちゃん!! なんでそんなトコロに居るッスか?!」 作戦その3 「エリカ博士、────っス!!」 いいっスか? よーーーく考えるっスよ?
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