その1 「そもそもの始まりは秋の事」
秋というと、食欲の秋とか運動の秋とかが一般的で、明らかに引越しなどという言葉はまず浮かばないはず。そんなシーズンじゃあないもんね。よっぽど何かがなければしない事だと思う。
リアル俺こと、このホムペの管理人・冬馬も当然のごとく、食欲だけを満たし運動はしないという怠惰な日常を慎ましく送っていたわけでありました。
当然のように、この時点で引越しなどという考えは微塵もありません。引越しのひの字も頭にはありません。そりゃあ当たり前ですよ。ワタクシはとてもいい場所に住んでるんだもの。
我が家から最寄駅までは、なんと徒歩1分! 走れば20秒! しかも線路を挟んで向かい側には商店街があり、中規模ながらスーパーもある。もちろんATMもあるし、クリーニング屋もある。自宅周辺の歩いて5分にはコンビニも2件あるんです。それに家の付近には大きな道路もないので静かだし、日当たりだっていい。さらに角部屋…。こんないい場所ないですよ?
ちなみにナゼか歯医者が6件あります。選びたい放題です!
…いや、歯医者はともかく、なによりもペット可な物件なんですよ! 我が家には引っ越す前から悪の帝王として君臨する猫様がおりまして、奴が住んでもOKという条件なんですよね。そういう部分を含めて考えれば、これ以上の条件のアパートなんてないわけよ。ああ、もちろん職場がある東京新宿にも近いです。とにかくいい場所なんですよ。
…さて、そんなアパートに居住しているわけですが、その日も相変わらず平穏な日常だったわけですよ。やっとクソ暑い夏も去って、過ごしやすくなるなぁ〜と満足してたわけ。
そうしたら、来たわけさ。問題の通知が。
書面にはこう書いてありました。
アパートに住んでる皆様コンニチワ。あと2カ月で取り壊すから、それまでに出て行け。
は? 目を疑いました。でも内容は変わりません。
あと2ヶ月で取り壊すんで出て行け。
そりゃあ文面は穏やかですよ? 誠に遺憾だとかなんとか、それらしいオブラートに包まれてはいましたよ? でも実際の内容はそういう事でした。アパートに欠陥があったため取り壊さなくてはなりません、という理由なのですが、注目すべき部分はもちろんその期限。
あと2カ月で出て行け?
───もう頭が真っ白。
そりゃあそうでしょうよ! いきなり書面であと2ヶ月で取り壊す、と言われたらどう思う? 何の問題もなく平穏に過ごしていたのに、すぐ出て行けなんて言われたら誰だってパニくるでしょ? もちろん、そういう事は初めてだったしね。どうしていいのか途方に暮れました。
どうしたものか〜と我が家の帝王がゴロゴロ擦り寄って来た時を狙い、隙だらけの腹部に必殺パンチをお見舞いしながら、一緒にゴロゴロしながら思案しているうちに一週間が過ぎます。あっという間でしたが、職場の人に相談できたので少しは落ち着いてはいました。
そんな時にやってきたのです。立ち退き屋が。
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