リアル俺が引越しをした話

「そのまんま、あった事を書いたノベル」
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前編:VS立ち退き屋さん 後編:引越しの一部始終


後編:引越しの一部始終

その8「ガラリと変わるキッカケ」 その9「軍資金と良物件」
その10「引越し屋を選んでみた」 その11「引越しとゴミ問題」
その12「そして新居にたどり着く」 その13「そのあとの色々」

その8 「ガラリと変わるキッカケ」

 そろそろ立ち退き騒動開始より7カ月目に入ろうかという頃、懲りもせず物件を持ってくる立ち退き屋の社長…、通称「起き上がりこぼし」は、すでに風景の一部と化している状況でした。

 ええ、それはもう華麗なまでに空気と化しておりました。

 まあ、確かに週に1〜2度やってくるのは、うっとおしい事この上ないのですが、冬馬は徹夜勤務が基本なので丸一日居ない事が多く顔を合わせる機会も少ないせいか、たいして会わない空気な奴らだと割り切れば前の穏やかな生活に戻っていたのであります。

 近頃ともなると、引越し屋の出してくる物件書類をダイレクトメールのごとくゴミ箱に捨てて終わりです。

 へ? 物件は見てないのかって?
 申し訳程度にパラパラは見ますが、すぐ捨てちゃいます。

 だって、自分に置き換えて考えてみ? どうでもいいチラシがポストに入ってたらそのまんま捨てるでしょ? それと同じですよ。引っ越す気がないのは変わらないし、持って来る物件リストがいつまで経ってもクズばかりだもんで、一つ一つを注意深く見る事に意味がないんだもの。

 例の立ち退き屋こと、起き上がりこぼしが何か言ってきたら、こちらが納得するような物件を持参すればいいだけじゃないの?と正論を吐いて叩いてやれば事足りるわけで、現状大勝利な冬馬にとって、彼らはもう無意味な存在だったのです。これ以上の進展はありえない。

 せっかくだから見てあげれば?…な〜んて思っているならそれは他人事だから言えるセリフ。
 自分が出て行かされる身であり、しかもさんざん馬鹿にされているのに、憐れみの情なんて沸くわけない。
 悪党は間違いなく彼らであって、これは相応の処置であり報い。

 そういうわけで、このように出口の見えない交渉という皮をかぶった、えげつない仕返しは着々と進行中で、相手の焦りを見ながらほくそ笑む冬馬も溜飲を下げつつあります。比喩でも嘲弄でもなく、ヤツらはもう相手にする価値すらない空気と成り下がっていたのですから、どうでもいいわけです。

 まあ〜、普通ならここで大勝利だった!と話が終わるのでしょうが、実質的にはここがターニングポイントでした。

 そんな折…、変化があったのです。
 相変わらず無能な彼らにではなく、冬馬の方に。


 いや、どうにもねぇ…、気力がスッカラカン状態だったのですよ。

 ちょうどその頃、かなり意気込んでいた、とある試験に大失敗しまして…、その反動で気力活力を根こそぎ失っていたのです。

 本気で失敗はないと確信していた試験にまさかの大失敗。それで気落ちしたままの無気力状態となり、せっかくの休みの日も何かをするでなく、ただネットを見てダラダラと過ごす日々が続いておりました。
 いつも見るサイトを何度も見ては更新されてないか期待したり、ニコ動やらYoutubeを見て、のらりくらりと計画性もなく無駄に時間を浪費する休日が続いていたのです。

 本気で気力のカケラも沸かないのです。
 かったるくて、何もしたくない気分でした。全てが面倒くさい。

 職場では次の休みこそ行動しよう! 次の休みこそ頑張ろう!と意気込むのですが、いざ休みになると何もしない。マジかったるい。ごろごろごろごろだらだらだらだら…、そういうダメな状態が続いていたのです。まさに抜け殻状態。

 そりゃあ失敗は誰にでもあるものだし、時間が経てば少しづつ気力も取り戻せるでしょ、…最初はそう考えていたのです。しかし、試験があった年明けごろからずっと、気力はさっぱり沸かず無気力で無意味な日々を送るだけでした。

 何かしなくちゃいけないのは分かってるのに、具体的に行動もせずに時間を潰すだけ。
 自分でも情けないと思っていながら、それでも行動できない。

 まあ、ようするに、

 いい大人が、少し失敗しただけで数ヶ月も気力が出せずにネットで時間を潰すような、発展性のない事をずるずるとしていたわけです。

 …いや、ネットをだらだら見る生活を批判してるんじゃないですよ? それはそれで幸せですよ? そうじゃなくて、やるべき事が目の前にあって、それを実行すべきだと分かっているのに怠惰でありつづけた。試験に失敗したならもう一度やればいいのに、そのまま気力を取り戻せない自分が嫌だったのですよ。

 月日が流れるのはあっという間で、少しくらいいいだろう、と思っているうちにすぐ年末だったりするものです。

 このままじゃ堕落するばかり。
 それが分かっていても行動に至らない。

 だから、キッカケが欲しかった。

 何かのキッカケで気力を取り戻せるなら、迷う事はない。
 周囲をガラリと変える事で向上心を取り戻せるなら、やるべきだと考えました。

 そしてちょうどよく、そのキッカケになりそうなものが目の前にぶら下がっていました。


 引越しです。

 これを機会に復活したかった。
 平たく言えば、ダメ人間すぎるのはやめたかったんですな。

 だってさぁ、情けないじゃない?

 ずいぶん昔に、計2年くらいニートやってましたが、その時とまったく同じなんだもの。
 いつかいつかって、いつまでも行動できない。

 もう嫌なんよ、ああいうのは。生きてるだけで情けない。

 その原動力として、環境を変える必要性を感じたのです。
 だからこその引越しなのです。

 …まあ、所詮は環境のせいしている時点で”逃げ”ですけどね。できる人なら環境なんて問題にしないはず。でも、そういう手を使わないとダメな人だという事なんですよ。そんな事は分かってるわけよ。

 そういうわけだから、別に立ち退き屋に屈したわけじゃあなく、たまたまその手段として引越しがあっただけの話なのよね。起き上がりこぼしがまったく邪魔でなかったか、と言えば嘘になるけど、期限の1年前だったから移転する意味なかったのは承知済みだったし。

 ともかく、
 そういうわけで、冬馬は引越しを決断したのです。

 なんだよ! 抵抗してたくせに結局は引っ越すのかよ。口ばっかりじゃん!
 …とか言われても、目的があるのに行動しないのは、それこそ愚の骨頂じゃないかな。そこで意地はってもなんの意味もないでしょ? 残り1年を立ち退き屋で遊ぶのが有意義だとは思えないし。

 思い立ったら即決断。

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その9 「軍資金と良物件」

 さて、気持ちを切り替えて引越しに全力投球と行きましょう!

 そうなると新居を探すことになるわけですが…、起き上がりこぼしらの提示する物件は全部無視して、やっぱり自分で探す事にしました。なんで今更あんなヤツらの世話にならなきゃならんの? 冗談じゃないよ。
 でも、もちろん転居に必要な軍資金は後でいただきますよ?

 そりゃそうさ。誠意はなくてもお金はお金だもの。必要以上にはいらないし欲しくもないけど、最低限はなくちゃ転居できないわけだし…。冬馬が嫌いなのは誠意をすっとばしたお金。社会通念上で納得できる順序の問題という事。

 元々、彼らが提示していた金額は、ぶっちゃけ”45万5000円”でした。左の図がそのまんまの原紙です。敷金礼金引越し代金、火災保険の途中解約分、それに住んでくれたお礼とかいう意味不明金10万も足して合計45万。こっちからは一度も金の話はしていないけど、それだけの提示があったのです。
 まあ、こんなもんじゃね? 引越しってマジで金かかるからね。

 …確かに、これ以上に請求しようと思えば十分取れただろうし、多く取る権利は多分にあったのだろうけど、あんまり金金言うと、ヤツらと同じでヒドく浅ましいじゃない? そこまで落ちたくない。

 社会的に見て権利主張ができる状況でありながらしないというのは、あまり利口でないのは分かるけど、どうしても嫌だったので、それで手打ちにしました。引越しに足りるお金があれば良かったし。

 そんなわけで、軍資金の目処(めど)が立ったので、さっそく新居を探すのですが〜、

 複数の不動産仲介屋さんで調べてもらったら、ペット可のアパートもそれなりにあり、入居の際に+何万とかでOKな物件が意外とあった。起き上がりこぼしの持ってきた物件もそれなりの数があったから驚きはしなかったけど。

 そんな中でも、家賃の価格帯が似ていると、当然のように似たような物件が多く見つかります。しかし、出来れば家賃は今までと同じ程度で収めたいというのが人情でして、1万円以上高い場所は断る事にしました。
 そうなると選択肢はそれほど多くないのですが、それでも全てが同じではないわけで、良さそうな物件を選んで実際に見せてもらいに行きます。やっぱり物件は直に見ない事には判断は下せませんしね。

 図面上部屋が広いといっても中身がボロボロだったり、収納スペースが乏しかったり、見た目がよくても隣に小学校があってクソうるさかったり、線路の真横なのに部屋に防音処理ゼロだったり…と、見ないとヤバすぎる物件がかなりありました。

 本当に物件は現物を見ないとダメ。痛感します。
 まだ引越し未経験で、今後に引越しする人はネット見るだけで決めるとか絶対やめとけ。

 絶対に自分の目で見て足で探さないとダメ。まじやばい。

 …それに加えて言うならば、物件情報が掲載されている書類に、”日当たり良好”とか”閑静な住宅街”とかよく書いてあるけれど、それだけ信用するんじゃなくて書いてない部分を聞かなきゃダメです。商店街とかコンビニ、病院などの施設、交通など真っ先に確認しておかないと。
 日当たり良好なんてのは、物件にアピールポイントがないと時に書かれている、いわば常套句だものね。快適とかウソくさい表現は疑ってかからないと危険。

 …とはいえ、物件選びは完全に運勝負のような部分があります。自分が行った時に良物件があるかなんて、事前にわかるわけじゃないし。面倒でも足を伸ばして、仲介屋さんをいくつか回らないといかんのよね。冬馬も3.5件くらい回りました。

 …そんなこんなで2週間程が経過したでしょうか?

 ようやく見つけたのは家賃が今までと同等(+1000円)の、最寄駅から徒歩3分、コンビニ目の前、郵便局、銀行が各20秒、スーパーは駅前なので同じく徒歩3分という好条件の物件。部屋はベランダ付きで光彩も広さも十分な3階の角部屋でした。全てを加味すれば、元の家よりもいい場所です。

 いやはや、まさか新居となる家が前以上の良物件だとは予想しなかった。

 あとは我が家の支配者、悪の帝王にお伺いを立て、話を進めればいいだけです。
「殿! よろしいでしょうか?!」
「ニャーーー!」
 殿もお喜びな様子でありました。

 そして2週間程手を尽くして探してくれた仲介屋さんにもお礼を言います。

「いい物件が見つかったよ。仲介屋さんありがとう!」
「良かったですねぇ。じゃあ、仲介料金は家賃1カ月の○万円です」
 …すっかり忘れていた仲介料金。そうでしたね。うう…、家賃の1カ月分も支払うのか…。
 削れていく引越し費用…。まあ仕方がない。

 ちなみに、

 良さげな物件を見つけ、どうしようかと迷った末に”一度帰って考えてみます”などと帰ったら、次回に行った時そこは100%残ってないと思わないとダメです。1日でも1時間でも遅くなれば別の人が入ってる可能性があるので、ここだ!と思ったら物件を回った帰りにでもすぐ決めないとダメ。

 だって、仲介屋も不動産屋も商売だもの。
 自分のところで契約してくれるかどうか不明な人を待つより、すぐ決めてくれる人の方がいいに決まってるでしょ? 好意で確保しといてくれる、だなんて甘い甘い。

 それに自分がいいと思った物件は、他人にもいいと思えるはずだから、そういう場所はすぐ無くなって当然だし、あんなもの先着順ですよ。先ほども言った通り、運よく先に見つけられたのだから、良さそうな場所はとっとと確保しないとダメなのです。即決即断が必要。

 また、保証人やらの必要書類はすぐに揃えられるよう、前もって親などに許可をもらっておかないとダメです。まごまごしていると不動産屋が「別の方に決まりました」と断ってくる場合がありますんで。

 …でも、実際のところは決まってなどおらず、コイツはダメだと判断されて断られている場合があります。
 なんてヒドイ!と思うかもしれませんが、これも当然の事。だって、もし自分が不動産屋だとしたら、いつまでも書類が集まらず、契約が進まない相手に部屋を貸したいと思う? 思わないでしょ? …それと同じ事ですよ。

 まあ、それほど慌てる事はないし、断られる事も滅多にないけど、そういう事もあるという話は念頭において置かないとね。…っていうか、冬馬自身が1つ前に見つけた物件の時にこう言われて断られたんで言っておきたいのです。ちぇっ、あの不動産屋マジ汚たねぇ。平気な顔して別の人が入居しましたとか嘘つくもんな。(さっきの3.5件はこれのこと)
 でも、その1件目を断られたおかげで、次のもっといい物件を見つけられたんだし、結果オーライです。そんなわけで冬馬は、その良物件を見た帰りがけに、ここでいいやと即断したのでありました。

 色々回っていたのですが、そこだけは一度見て”ここだ!”とピンときたんですよね。
 だから見たあとすぐ決めちゃったというわけです。

 …ああ、そうそう。
 この時点であの起き上がりこぼしには何も話していないので、引越し関連の必要経費は自腹です。

 だって、ヤツらに話せば費用の振込みには立ち退き了承の書類にサインしてくれ、と言ってくるだろうから。そんなモノにサインしたら、手のひら返して態度変えるかもしれないものね。信用も信頼も間違いなくゼロの相手にこちらの状況を話してやる義理なんてない。

 まあ、軍資金45万5000円の支払金はこの書面で確約を貰ってあるので取り戻せるのは確定済み。だからいまは貯金から払えばいいわけだから、今この時点で話さなくても良い。まだじらさないと溜飲下がりきってないし。

 そんな事よりも引越しの荷造りの方が大事。
 これが一番の面倒なんだよな〜。


 *現状で冬馬本人が支払った金額

 敷金+礼金+ペット居住費+入居月の家賃+仲介料。
 これだけで37万くらいかな。ペット入居費が痛かった。

 こんなもんなんですよ。それに引越し業者まだ探してないので、もう少し掛かるかな。
 引越し費用での45万なんて大した額じゃない。

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その10 「引越し屋を選んでみた」

 さて、市役所へ行ったり、電気ガス水道類の手続きしたりと転居手続きを進めている冬馬ですが、肝心の引越し屋さんがまだ決まっておりませんでした。

 引越し屋さんと言っても、その業者数は途方もない数でして、CMで有名なのだけで全部なんて事はありません。ネット検索すれば無数に出てきます。その数もはや無量大数です。それだけあると、どれがいいか?なんて分かりませんが、ようするに”安くて安心ならどこでもいい”わけです。そりゃそうだ。

 安さを競うなら各社を比較すればいいだけなので分かりやすいのですが、安心…つまり荷物を運ぶ人がどれだけ熟練なのか、荷物を大切にしてくれるのか、などを考えなければなりません。

 そうなると、CMをやっているような業者の方が目に見える分だけ安心できるのですが…、でもネットなどで評判を調べると、荷物が無くなったとか、傷がついて弁償もしてくれないとか悪い評判ばかりが目に付きます。いい評価があっても、悪い方を参考にしちゃうのは誰でも同じでしょう。そうであれば、大手の引越し業者が必ずしもいいわけではないのだと思えてくるわけです。

 とはいえ、名前も知らないような業者は不安なわけで…。
 う〜む、弱りましたな。

 確か、約5年前に引越しした時はCMでも有名な「アート引越しセンター」でした。確かに荷物運搬や設置は安心でしたが、料金もそれなり(距離もあったし10万くらい)だったので、今回は安くしたいという気分なのです。

 しかし冬馬は、そこで”真理”に気がついてしまいました。

 引越しで荷物が無くなった時を考えてみましょう。
 荷物無くなったら困るよねー。

 あれ? でも、我が家って無くなって困るような品ってあったっけ?



 熟考する事たっぷり数十分。



 ま っ た く な い !



 パソコンは色々入っているので大切ですが、それ以外になくなって代用が利かない品はなかったのです。
 だって普通に考えて、いくら悪い業者だったとしても、服だの食器だの金にならない品を盗むわけがないじゃん。自分が悪人だったら、そんなものよりも高価な品を狙います。

 でも、それに値するものが我が家にはない。

 TV? 元々あんま使ってないし、なければネットでニュース見ればいい。ゲーム遊ぶ時に使ってたくらいだものね。
 ビデオデッキ? いまさらテープ式のだから盗られてもPS3でブルーレイ見られるし…。  じゃあPS3。…いや、どうせ旧式だから新しいの買えばいいし。そもそも高価でもなんでもない。  冷蔵庫も旧式、電子レンジは貰い物。…あとなんかあったか?

 ないのです! 金になりそうなモノ自体が皆無なのです!
 素晴らしき安上がりな人生!

 そういうわけで、基本0円の引越し屋を選びました。

 えー? だって失うものがないんだから、なんだっていいじゃん。

 いくらヒドイ業者だからって、投げて運ぶとか、荷物全部が破損…ような引越し屋なんてないよ。よくよく考えれば、どこもそんなに変わらないんじゃないのかね。こんな世の中、そこまでズサンな事してたら生き残れないでしょ。

 だから、どこだっていいんです。
 否、どこだって大差ない。

 基本料0円、というのは、よくある携帯電話0円とか、パソコン0円とかとカラクリは一緒です。インターネット契約2年間を必ず契約とかの条件付です。

 前に、とある家電量販店で働いてた事があるので知ってるのですが、新規契約を取るとお店側にインセンティブといって一定料金が入る仕組みになっています。基本0円での引越し屋は、依頼と同時にNTTに新規加入してもらえば3万円が利益となる。だから業者にとっては0円でもいいわけです。
 とはいえ、我が家の引越しは距離的に0円というわけにはいかず、2t車1台、作業員2名で距離を含めて計5万円弱の計算でした。実質的に支払ったのが2万でしたので、普通の引越し屋と比較しても格段に安く済んだ、という事ですな。

 インターネット新規契約はNTTフレッツを2年という条件でした。あとはプロバイダ指定というのがありましたが、…元々NTTに契約するつもりだったし、プロバイダ指定先も変な場所ではなかったので、そのまんまでいいやと基本料0円のうさんくさいトコロに頼むことにしました。

 肝心なのは、その”うさんくさい引越し屋”で大丈夫だったのか?…という事でしょう。
 ふふふ…それは後でね。

*軍資金45万5000円、新居費用37万、引越し代金2万。合計39万円で残り6万5000円。

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その11 「引越しとゴミ問題」

 さて、引越しには荷造りが必要なわけですが、とにかく困ったのがダンボールがない事。  探すとなると、ちょうどいいサイズが意外とないんだよね。しかも数が必要だし。

 佐川急便などで、荷造り用ダンボールとか売ってますけど、買うのも馬鹿らしいじゃない?

 なので、仕方なく例の起き上がりこぼしを電話一本で呼び出し、引越しするからダンボールをありったけ用意しろ、と指令を出しました。やっと引越ししてくれると喜んでいるようでしたが、別にヤツらはもうどうでもいいので、電話だけで済ませて顔を合わせる事もなくダンボール30枚&ガムテープGet。

 で、

 ここで重要なのは、持って行くもの、捨てるもの、売るものの選別です。
 せっかく引っ越すのだから、我が家にはびこる乱雑な品々をどうにかしようと計画していました。

 だから、思い切って徹底的に処分する事に。

 本棚5つ分で入りきらず、床にまで積み重なった書籍類は棚2つ以下まで減らし、あとは全部売る。
 服飾類も着ないものは全部処分。とっておいても着ないなら意味がないから処分する。  あまった棚なども全部捨てる。子供の頃から使ってた小タンスも捨てる。座椅子も捨てる。捨てる捨てる!

 そして迷ったのが大量に残るゲーム機やソフトでした。

 ファミコンから始まり、ディスクシステム、ゲームボーイ、PCエンジン、メガドライブ、メガドラCD、スーパーファミコン、ゲームボーイカラー、PCエンジンCDロムロム、セガサターン、ニンテンドウ64、ドリームキャスト、プレステ1、ゲームキューブ、プレステ2、ニンテンドーDS、PS3、Wii…。

 それに対応のソフトも大量です。ファミコンが80本くらい、SFCも60本くらい、その他の機種も各5本位は持っております。昔からゲーム大好きでしたからね、大切に保管しておいたのです。(wiiとPS3は本体しかないけど)

 まさしく宝です。
 ゲーム好きの自分にとっては、とてつもなく価値があるものでした。

 …しかし、気づいてしまいました。

 大切に保管していたゲーム機器、これはいつまでしまっておくものなの?  本当に大切だから保管してあるのは分かる。だけど、あと何年しまっておけばいいの?

 新居へと越して、そこでまた押入れにしまい込んで、それでどうするの?

 うん、分かってた。
 これらがすでに必要がないモノだというのは理解できていた。だけど、それでも捨てられなかった。

 だってこれらは本なんかと違って大切なモノなんだもの。
 子供の頃から成長と共に遊んで、そして増えていった。それぞれに思い出を作り上げてきたんだもの。

 だから押入れに個別に分け、専用ケースに入れて大事に大事に保管してきたのです。  もう実際に遊ぶものではなくなっているけれど、それでも大切なのは変わりなかった。

 でもね、そこで真実に至ってしまったんですよ。
 どうしようもないまでの真実を理性が納得しちゃったんですよ。

 大切な思い出は、押入れにしまっておくものじゃない。
 心にしまっておくものなんだよ。

 たとえ現物が手元に無くても、思い出が大切でなくなるわけじゃない。
 必要なのは形じゃないはず。重要なのはそこではないはず。

 大切である事と、保管しておくことはイコールではないんですよ。

 もちろん考え方は人それぞれ。この考え方が正解じゃあない。
 だけど、これもまた真実。極端かもしれないけど、この考え方も間違いではないはず。

 それに元々、状況をガラリと変えるための引越しなのです。いつまでも同じであってはいけない。
 中二病みたいな言い方をすれば、過去にしがみついても前には進めないのです。

 だから、もう処分しようと思い切りました。

 もちろん今も使ってる機種は残しますよ? でも、DSより古い機種はソフトごと全部処分。(売る事も考えたけど、その膨大な手間を考えたら時間が足らなすぎた)

 そうして生まれたのが膨大なゴミ。

 売れない品は全部ゴミになるわけで、本棚、箱のないゲーム類、座椅子などの家具、古い布団、カーペット、家電。
 我が家に収納されていた、ありとあらゆるゴミが残されました。

 どうしようかと悩んだ末、めんどう臭いので起き上がりこぼしの会社に引き取らせました。
 引っ越してやるんだからと押し付けたわけです。

 返事は快諾でした。

 まあ、それも当然ですな。ゴミ処理でかかる数万円よりも、冬馬の立ち退き後に生じる自社への利益の方が遥かにデカイんでしょうから、こんな程度は大した事ないんでしょう。…こっちとしては無料で済めばどうでもいいんだけど。

 でも、普通に引越しする人は、ゴミ処理代金はけっこう見込んでおいた方がいいですね。冬馬のように状況を利用できるならそれに越した事はないんですけど、そうそううまくはいかないだろうし。

 なので、軍資金はそのまんま。残り6万5000円。

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その12 「そして新居にたどり着く」

 4月末、とうとう引越しとなりました!
 やって来たのはあの”うさんくさい引越し屋”です。

 正直言うと少しばかり運送中の紛失や破損という不安はあったのですが、大事なMYパソコンと我が家の帝王は自分で運んだため、あとは何がどうなろうが、まあいいやと達観していたせいで気分的に楽でした。
 で、その引越し屋さん。どんな人が派遣されて来たのか…というと、思いっきり弱小企業の運送屋さんっぽい人でした。やけに普通の、少し細身な雰囲気の50前くらいのオッチャンと、耳ピアスの茶髪あんちゃん。
 完全に私服で、どこのバイトの人?のような雰囲気がビシバシ漂っていたのですが…、その二人、実はかなりの熟練者のようでした。手馴れているのです。オッチャンが指示を出し、茶髪あんちゃんがOKを出して運ぶ。やたら手際がいい様子。

 冬馬が用意したダンボールを次から次へと運びますが、家具やガラス類は専用マットのようなもので手早く包み込み、トラックへと運んで行きます。正直、見ていて安心してしまいました。

 コイツら、できる!! …まさにそんな感じ。

 基本料0円だからと警戒する事なかったですね。むしろ完璧でした。新居はアパート3階だったのですが、クソ重い荷物をヒーヒー言いながらも手早く運んでくれまして、最初は広かった新居もすぐに梱包したダンボールで一杯になったのです。
 全てを運び終えた帰り際にも、荷物が無くなっていないか、傷ついてないかを確認し、トラックの中身も見せて運送が問題なく完了した事を再確認させてくれます。その上で作業終了の書類にサインをします。
 どう見ても弱小企業…などとあなどって申し訳ない。お前らすごいわ。プロだわ。

 その人達は委託を受けて1回1万円程度の金額で単身者の引越しを専門にやっているらしく、数をこなしているようで、要点を踏まえた動きをしてくれてました。名前だけ有名な会社よりも、こういう人達の方が経験値は高いのかもしれませんな。

 …そんなわけで、引越し自体はあっさり終わったのでありました。

 ノベル的には面白くないとは思いますが、基本料0円引越しは大満足な結果となったわけです。
 なんでも挑戦してみるものですなー。(っていうかひどく運任せすぎ)

 まあ、運び終えただけで、これからが開封作業となるわけですが、あとは荷物を整理するだけだと考えると気分的には楽です。しかし居間となる6畳が荷物でパンパン。…これ、引越し前に色々と処分してなかったら、とんでもない地獄と化してただろうね…。そういう意味でも処分して正解だったわ。

 さて、さっそく開封作業になるわけですが、その日はすでに夜中となっており、翌日は徹夜勤務という非常に非情なスケジュールでありました。もう片付ける時間などないわけで、さっきからニャーニャーと空腹を訴えるヌコ様と、疲労困憊の冬馬もエサの時間です。ダンボールタワーに圧迫されながら、隙間を探して飯を食うしかないのです。

 もちろん寝るにしても、布団を広げるスペースなどあるハズもなく、わずかに広さが残っている玄関に布団を用意し、寝ることになります。マジ過酷です。
 …しかしヌコ様は、現状のアスレチックのような我が家がお気に入りなようで、色々と歩き回っては隙間に入って寝ておりました。タワーが倒れてきたら間違いなく圧死するというのに、ホントいい気なものです…。

 翌日、朝方に洗濯機を回そうと蛇口をひねったら、接続部の蛇口がひび割れしていたらしく、”俺水びたし”状態という散々な目に遭いました。しかしまあ、引越しにトラブルは付きモノ。修理は大家さんに相談するとして、ともかく今は観念して、大して乾かないまま仕事へ行くしかない…。

 しかしこの山となったダンボールの荷物…、仕事から帰ってきたら全部ひとりで開封しなきゃならんのか…。
 いいや待てよ?
 きっと気を利かせたヌコがやっといてくれるだろう!…のような白昼夢を見たかった冬馬でした。

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その13 「そのあとの色々」

 自腹状態だった引越し費用の件。
 当然ながら取り戻さなくてはならないので、引っ越した事を起き上がりこぼしに報告。

 入金のためには解約書に署名と捺印が必要でした。

 順序としてそれは理解しているのですが、最後まで仕返ししてやりたかったので、相手が急いでいるのを知っていて、立ち退き日は月末最終日にしておきました。
 すでに引越し完了している以上、前のアパートは必要なかったんだけど、支払った当月分の家賃は戻らないそうだから当然の権利でしょう? それに分かりきった嫌がらせができる最後のチャンスだったし。これくらいやり返さないと失礼。

 で、その月末の立ち退き予定日。起き上がりこぼしが12:00に解約書と鍵を取りに伺います…というので、解約書&鍵を通路のそのへんに置いて、とっとと帰りました。

 わざわざ待ってやるなんて冗談じゃない。まったく信用していない相手のために時間通りに待機して、うすら寒い作り笑顔で引越し完了うんぬんを話すとか、どんなバツゲームだよ。
 起き上がりこぼしも、こちらの事を内心は腹立たしい相手とか思ってたんだろうから、会う必要はなかったと思うし。もしヤツが礼儀上は挨拶しておきたいという自己満足を訴えるなら、冬馬はそれに付き合ってやる程のお人好しでもない。

 まあ、そのようして、長かった立ち退き屋との戦いも、呆気なく終了したのでした。

 色々と勉強にはなったので、完全に無駄ではなかったけど、さすがにもう立ち退き話はうんざり。
 いまの場所は、せめて10年くらいは気楽に住まわせて欲しいものです。引越しは金かかるしなー。

 へ? 残った軍資金の6万5000円はどうしたかって?

 そんなの新しい家具揃えたら吹き飛びましたよ。カーペットだけで1万とかするし、ハンガーラックやら新タンスやらを買ったらプラスマイナス0で終了です。ペット居住費がなければそれなりに浮いたでしょうけど、必要経費だしなぁ。

 さて、

 書いている時点で入居より、ちょうど2カ月が経過しております。もう2カ月なのか、まだ2カ月なのか…。肝心の住み心地や、心境の変化はどうなったの?と聞きたい方もいるかと思いますのでご報告。

 住み心地はバッチリでマジ快適。
 見つけた物件が良すぎた、というのはあるので今回は運が良かったんでしょうね。

 一つだけ難点を挙げるなら、通路向かいの部屋が大家さんの住んでる部屋なのですが、そこの飼い犬(子犬)が昼間に主人が出掛けているせいかクゥンクゥンと寂しくて鳴きっぱなしでして…、徹夜明けで帰ってきた冬馬が、さあ寝よう…とするとキャンキャン吠えてウルサイです。
 でも、一週間くらい経つと気にならなくなりましたけどね。我が家の帝王様などは最初から気に留めてもいませんでしたが…。(相変わらず、ぶうぶう寝てます)

 あとは…部屋がマジ綺麗になりましたかね〜。
 こまめに片付けて、すぐ掃除してを維持できてます。ほんと写真を撮りたいくらいスバラシイ部屋!
 (いつまでもつか…)

 で、一番の目的だった気力の回復は、というと…。

 相変わらずネットをだらだら見てたりもしますけど…、こんな話を書けるくらいには回復してるんじゃないかな? よし行ける! 心機一転、頑張れる!……ような気がする。

 そんなトコロです。


 おしまい。

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「あとがき」

 誰かが提案してきた話、もしくは電話での勧誘、街中でのアンケート。
 いい話もあれば悪い話もあるし、ウソもあれば微妙な話もある。

 そういった話をどうすればいいのか、そんなよく分かってない自分に必要なのは、状況判断をする事です。
 なぜ相手はそういう話を持ちかけてくるのか? 何をしたがっているのか?
 まずそこを考えてみれば、こちらがどう対応すべきかを考える事ができるんじゃないかと思います。

 …なんて偉そうな事を言っても、冬馬も最初に出ていけ!と言われた時は超パニくりましたからね。
 落ち着けったって、そう簡単にいくもんじゃないわけよ。

 よーするに、混乱する前に、分からなければ誰かに相談すればいいのです。聞きゃあいいのです。
 なんでも相談すれば、いい答えが返ってくるかもしれないじゃないですか。

 聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥。

 何か困った事があったら誰かに聞く!
 聞くだけならタダだし、自分には想像も及ばない事を教えてくれる事もある。

 これだけで色々な事が解決するかもしれません。(*注 〜するかもしれません!)

 ま、そういうわけで色々と勉強になった案件でしたという事さね。

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