3分で読めるラテール

「まだまだ続く、とっても変なショートノベル」
トップへ戻る


その13「トキメキBOX! レア〜〜」 その14「ご飯を食べに行く」(前
その15「ご飯を食べに行く」(後 その16「悪い子アカさん」
その17「プリンとカッパ」(前編) その18「プリンとカッパ」(後編)
その19「どろぬま中華」
バトル 「ミドリガメ、大嫌い! 前編」 バトル 「ミドリガメ、大嫌い! 後編」
*バトルだけ、超マジメな執筆作品となっております。
【ラテール・ノベル1】 【ラテール・ノベル2】 【ラテール・ノベル3】 【ラテール・ノベル4】

その13 「トキメキBOX! レア超大当たり!」

 トキメキボックスという”おみくじアイテム”が導入されたんです。中身は様々ですが、大当たりでNPCの「ミニチュア人形」が入っていれば、特別アイテムと交換してもらえる。

 このジエンディア大陸では、そんな制度が盛んに行われていました。どんなアイテムが当たるのかな? 放浪者のみんなは、ワクワクしながら箱を開けていました。

 開けていたのですが………。

「ちょっとさぁ、歩きにくいんだよ。なんなのさ、この空き箱の山は!」
「これ全部、トキメキボックスの箱みたいですよ?」
 エリアスの住宅街を歩いていたのは、いつもの二人。一人は赤い髪をながーい二つのお下げにした元気の良さそうな女の子、アカさんです。
 槍が得意で、なかなか強いLV50。でもやられてばっかりなトコあります。

「そしてもう一人。真っ白な雪のような髪と、地獄の底まで凍らせる冷血な瞳、さらに毒しか吐かない悪逆非道の口先に、サラ地のような鉄板胸をした魔性の女───、その名も……」

「そこっ! 勝手に人の解説を変えないように! なんですか!? その毒だの悪逆だのは! どういう事ですか?! どういう事なんですか!?」
「ぎゃあああああ! NO! ノォー! ほっぺがちぎれてしまいマス!」
 ……と、いつものように、ふざけたアカさんが白髪の女の子フルーレさんに、「ほっぺた両側引き伸ばしの刑」にされております。…まあ、毎度の事ですねぇ。

 彼女らは、このジエンディアという世界をめぐる放浪者、いわゆるプレイヤーキャラ達なのです。二人の関係は見た通り、ボケとツッコミです。

「違います! なんですか、その投げやりな解説はっ!!」
「まあまあ、フルーレ君。いいじゃないのさ。サドマゾのコンビとか言われてたら、そのまんまで言い返せないからねー。」

「それも違いますっ!!」
 ……などと言いつつも、実際じっさいはいつもアカさんがみょうちくりんな事を始めて、フルーレさんがツッコミを入れる。そんな関係です。しかしフルーレさんは、いじめられて文句を言いつつ、実はよろこぶ方です。

「だから違うって言ってるでしょう!!」

 さて、二人の周囲にはトキメキBOXの開き箱が山の様に転がっております。みんな空けるだけ開けて、箱は投げ捨てているからです。……中には、どうでもいい道具が出たので、それごと捨てている人もいるようで、ガラクタがゴロゴロ落ちているのです。

「私達はただ散歩しているだけです。」
「そうだよ。ぜんぜん拾ったりとか、回収したりとかしてないよ。」

「いくら私達が貧乏だからって、落ちているモノを拾うだなんて…。あ、アカさんあそこ!」
「うっひょう! 牛乳だよ牛乳! これまだ飲めるかな? 飲めるんかな?」
「アカさん見てください! こっちはメロンですよ、メロン! 信じられますか!?」





「…………………。」
「………………………。」



「散歩ですよね? アカさん。」
「うん、そりゃあもう散歩だよ。当り前さね!」
 二人は自分の言葉に悲しくなっていました。人間、追い詰められると手段を選ばなくなるのです。拾って生活費の足しにするくらい、許してあげてください。

「ううう……、みんなビンボが悪いんだ…。」
「しっかりしてください、アカさん。月末になればクエストクリアの報酬ほうしゅうが入るんですから…。」
 彼女らはいつも貧乏びんぼうなのですが、今回はこれまでになく貧乏なのでした。
 前回の話で贅沢ぜいたくアイテムを使いまくりましたからねぇ…。

 そういうわけで、現在スッカラカンなのです。ルビージェムすら買えません。少なくとも、月末までは耐え忍ぶしかないのであります。

「はぁ、いくらお腹に入るったってさぁ、…牛乳とメロンだけとか、ひもじすぎるっしょ…。」
 この路地には、表通りから運ばれてきた箱の残骸ざんがいが山ほどあるので、探せば探すだけ何かがGetできます。そして箱だけを雑貨屋に持っていけば、10Gで引きとってもらえるので、月末までは毎日こんな生活。
 …いいとしの乙女がゴミあさりなどと……。

「書いてるアナタがやらせてるんでしょう! さっきから何ですかっ!」
「……フルーレが怒るとマジ怖いから、ボク止めない。」

 ……コ、コホン。えー、話を戻しましょう。

 さて、二人はかれこれ30分も色々と探していたのですが……。今日はめぼしい品もないようです。あきらめて帰ろうかなぁ、と思っていたアカさん。ちょうどよく、それを見つけてしまいました。

 目の前には、一つだけ開いていない箱があったのです。
 アカさん達にはカギを買うお金がなく、一度もあけた事のない箱。

 だというのに、その未開封の箱の前には、鍵が落ちていたのです!
 高くて買えないはずの鍵が! 使わずに残っています!

「うおおおおおおお! こりゃあ空けていいって事だよね!? うしししし…、フルーレはまだ向こう探してるな。……じゃあ、空けちゃおっかな〜。」

 何が出てくるか、とワクワクしながら、かな〜り嬉しそうに鍵を回し、箱を空けるアカさん。

 ゆっくりと解除かいじょ、そしてふたを開くと、
 ……中には、

 どう考えても景品ではない品が入っていました。
 やたら目付きの悪い幼児が、じーとこちらを見ていたのです。

「このガキ………、なんぞ?」
 その幼児は、頭にアザラシの皮らしきモノをかぶっており、少しのぞいたサラサラの金髪。そして青に輝くキラキラの瞳が、”ナンヤワレ! 見てんじゃねぇ!”みてえな冷酷れいこくな視線で、アカさんを貫通かんつうするほどにらんでいたのです。
 それを受けた瞬間、あろう事か……アカさんも”やんのかオラ!”と言わんばかりに、不良っぽくすわって、ガン飛ばしはじめました。視線の先ですさまじい火花が散っております。

「ちょっと、アカさん! 何やってるんですか!?」
 ポコーン…と、いい音。
 なーんにもにも入ってない頭に軽いチョップを食らったアカさん。

 見上げるとフルーレさんが覗きこんでいました。どうやらフルーレさんには、アカさんは幼児をいたぶる悪党に見えたようです。実際そうですし。

「だってさー、こいつボクにケンカ売ってくるんだもん。そりゃあ相手になってやるさ!」
「子供相手にそういう事しちゃいけません。」
 まったくです。幼児相手に大人げの無い態度です。むしろ、児童虐待じどうぎゃくたいです。警察の人にタイーホされます。

「え〜と。アナタどうしたんですか? こんな所で。おうちは近くですか?」
 いまだ警戒けいかいしている幼児に優しく話しかけるフルーレさん。いや、えらいとか、偉くないの問題ではなく、これが普通なんです。いきなり幼児ようじ相手に最初からケンカ売るアカさんがアンポンタンなだけで、これが当たり前の対応なのです。

 一方、じっと見るだけで何も言わないアザラシ頭の子供。少々困ったフルーレさんは、そうだ!と思い出して、回復用のクッキーをあげてみました。2段重ねのクリームがたっぷりのやつです。

 すると、アザラシ幼児はクッキーをひったくってガジガジ食べ始め、代りに腰のポシェットから、一枚の手紙を出してフルーレさんに渡します。

 フルーレさんとアカさんは、一緒になってその手紙を読んでみる事にしました。
 中には、ミミズののたくった様な字で、こう書かれていました。


 ”おめでとうございます! 大当たりです!!”
 ”超レアな「目付きの悪い、なまいきチョーキー」でございます。大切に育ててください”

 ”私はもうつかれました…”


 ……どう見ても、わなにしか思えない未開封のトキメキBOXと、都合よく落ちてた鍵。それに加えて、急いで書いたらしい手書きの手紙……。

「この最後の、疲れましたって……?」
 その辺はよくわかりませんが、とんでもない品をGetしてしまったようです。なぜ未開封の箱と、都合よく鍵が置かれていたのかは、考えない方が正解なのかもしれません。むしろ考えてはいけません。

 アザラシ頭のチョーキーさんは、フルーレさんのスカートをちょいちょい、と引っ張って言いました。

「腹へった。」
 ……これが、アザラシ幼児チョーキーこと、チョーさんとの出会いだったのです。

↑UP





その14 「ご飯を食べに行く」(前編)

「僕もうとらの皮とか、桃の葉っぱとか、九尾の尻尾しっぽとか…そんなの食べるのイヤだよ!」
 今日のお昼は食堂だ、という事で着いて来たピンクちゃん。一緒なのはいいけれど、さきほどから飼主のアカさんに、労働条件ろうどうじょうけん改善要求かいぜんようきゅうを出しています。


「冷静に考えれば普通はそんなの食わないじゃん! むしろそれって虐待ぎゃくたいだよ! ご飯お腹いっぱい食べたら、その後でうったえてやる!」
 ペットは基本的に、てきから取れるアイテムを食料にしているのが通常なのですが、アカさん達は変な敵とばかり戦ってるので、みょうなモノしか食べていないのです。

 ピンクちゃん、ポポグル人形は大好物でいっぱい食べるなクセに、虎の皮には文句言ってます。
 その辺の感覚は、さーっぱりわかりません。

「なーに言ってるのさ、山本ピンク君? …お前、この前までシルクベビーの哺乳瓶ほにゅうびんとか一生懸命に食べてたじゃん。」
「だって食べるモノないんだもの。……っていうか、僕の名前はただのピンクだってば! なにその山本って! いつから僕の名字は”山本”になったのさ!」

「え? …じゃ、じゃあ………山田?」
「え?じゃないよ! なんで否定ひていされて、うろたえてんのさ! アンタ分ってて言ってるでしょ! どう考えても山田違うでしょ!? 無理して名字つけないでよ!! のぞんでないよ!」
 確かにペットは雑食ざっしょくとはいえ、そんなもん食わせる方も食わせる方です。だいたい、なんで放浪者(ラテールのキャラ)達は、そんなしょうもない品ばっかりひろい集めてくるのでしょうか?

 前々から不思議に思っていたのですが、シルクベビーを倒した時、なんでわざわざ哺乳瓶なんぞ集めてくるのでしょう? 集めてどうしようというのでしょうか? 食う方も食う方ですけど、街で普通に買いとってくれるのにも問題があるように思えます。…なんかあるんですかね?

「フル、腹へった。」
「そうですね、チョーさん。じゃあ注文しましょう。…アカさんもピンクさんもいい加減にしなさい。食堂では静かにするものですよ。」
 店に入り、フルーレさんのとなりにちょこんとすわって下から見上げているのは、先日拾った捨て子……ではなく、トキメキBOXのレア景品けいひんであるチョーキーこと、チョーさんです。相変わらず目付きが悪くてぶっきらぼうですが、フルーレさんにはとてもなついております。

「ちぇ! なんだね、そこのアザラシ太郎は! …お前、なんもしないで飯を食う気かね? ボクはしっかりモンスター倒したっていうのに。お前、アイテム拾ってただけやん。…それで同じ飯を食うとは納得いかん!」

「………アカ、うざい。」
「なんやワレー! ワシなめてっと痛い目みるどーー!!」
 くわっ!と目を見開いて、口から炎を吹き出さんとするアカさん。すさまじい気迫です! もはや手をつけられそうにありません。子供相手に大人気おとなげない!


「静 か に し な さ い と、……言いませんでしたか? ああん?」
「はい。失礼しました。以後、気をつけます。」
 フルーレさんの問答無用の迫力と冷酷非道れいこくひどうな眼力に、アカさんは心の底から恐怖にふるえました。ここで反抗はんこうなどしたら人生が終わりです。

「………アカ、ざまみろ。」
「なんやーーー! オラーーッ!!」
 再び猛獣もうじゅうのごとく牙を向いたアカさん!…ですが、その瞬間しゅんかんにフルーレさんのアイアンクローで取り押さえられました。メキメキ…といういやな音が容赦ようしゃなく聞こえます。アカさん終了です。

 そのわきで…、ピンクちゃんはその光景を前に恐怖でガタガタとふるえ、チョーさんは淡々たんたんとメニューを選んでおりました。……後編に続きます。

↑UP





その15 「ご飯を食べに行く」(後編)

「ピンクさんは辛口からくちカレーライスで、チョーさんはラーメンが食べたいのですね。…では、私はスパゲッティをいただきましょう。……それで、アカさんは?」

「水で結構けっこうです。」
 恐怖のアイアンクローから開放かいほうされたアカさんは、魂がけたようにテーブルにべったりりついておりました。すさまじい恐怖でご飯ものどを通りません。ガクガクブルブルです。

「ふう……、静かにしてくれるのなら、もう怒りませんから、アカさんも一緒に食べましょう?」
「そお? じゃあすぐ決めるー!」
 いきなり元気になったアカさんは、食べられると知ると小踊りするほど喜んでいます。まったく…、今回もさっぱり反省していないようですね。でもご飯はみんなで食べるからオイシイわけだし、ここは許してあげましょう。

「えーと、えーと……ボク、これがいい!」
 元気良く選んだのは、特製のテリヤキバーガーでした。しかし、なぜか写真が黒くなっております。なぜでしょう? よく見れば、メニューには写真が明るいのと黒いのがあるようですね。

 おや? よく見れば注意書きが書いてあります。アカさんはそれを読んで見ました。


「……えーと…、ご注意。この食品は、LV.141以上の方しか食べられません。」



「……………。」
「………。」
 うーむ。どうやらこのゲームでは、キャラのLVによって食べられるかどうかが決まっているようですね。アカさん達は平均でLV50。このテリヤキバーガーは食べられません。

「納得いかん! 誰だ! こんなルール決めたのはーー! 責任者を呼べー!  しかも食べたら筋力75上昇ってどういう事なのさ! ドーピングかっ! ドーピングなのか!?」

「アカさん、見てください! このチョコシューっていうの。食べると体力が減りますよ? どういう事なんでしょう? 劇薬でも混ざっているのでしょうか?」
「腹へった。」
「僕、やっぱりポポグル人形がいいなー。」

「こっち見てよ! なんでヨーグルト飲めるのに、ウーロン茶はLV足りなくて飲めないの?! このLV差はどういう事さね!? 間違ってるよ!」
「アカさん、あれ見てください! あそこの人、すごいです! HP回復クッキーを99個を4セット、396個まとめて買ってますよ!? 両手いっぱいに買って、どうやって冒険するのでしょう?」

「腹へった。」
「あーでも僕、ポックル人形も好きだなー。」

「あ、見てこれ! 牛乳飲むと幸運がUPって書いてある! どうして牛乳だと幸運なのかね? 甘酒飲むると運が15UPって、どういう理屈で牛乳よりUPするのかね?!」
「あれ、これおかしいですよ!? 効果時間ってなんですか? なんで食べると時間限定なんでしょうか? やはりドーピングですか? ドーピングなんですか?」

「腹へった。」
「あーイヤイヤ、だけどポルグル人形も捨てがたいな〜。」



 ……5分後、
 あまりにうるさいので、店から追い出されました。

 どこかへ食べに出かけた場合は、大人しくしましょうね。こういうメニューにケチをつける人達を見たら、目を合わせないように。

↑UP





その16 「悪い子アカさん」

「フル…、おれ、魚くうぞ」
「まあ、チョーさんは本当にお魚が大好きですね。」
 今日の冒険は、赤いさとうきび畑です。忘れていたクエストをやりに来た、というわけですね。
 しかし、さすがにもうこの周辺しゅうへんはザコばかりです。お仕事ではありましたが、ピクニック気分でやってきた一行いっこうでした。

 アザラシ娘のチョーさんも、とっても楽しそうです。

「フル、はしご。……おんぶ!」
「はいはい。じゃあ、しっかりつかまっててくださいね。」
 はしごがある場所では、チョーさんは自分で降りる事ができません。だから、フルーレさんの背中にしがみついて移動です。

 ピクニック気分という事で、二人とも楽しそう。とっても、なごやか〜な空気が流れます。
 こんな時間がいつまでも続けばいいですねぇ。


「……あの野郎…。」
 そんな楽しい雰囲気ふんいきの中で、一人で超超超〜不機嫌ふきげんな人がいました。誰かをうまでもなく、アカさんです。
「まー仕方ないんじゃないの? 相手は子供なんだしさぁ…。」

「ならん!! ボクのヨメひとめしようなどと、ゆるされるものではない!」

「アカさん、文字がデカいよ! ハミ出てて見づらいよ。小さくしてよ。」
 なんだ…、アカさんはフルーレさんを独り占めされているので、面白くないんですね。いわゆる嫉妬しっとというやつですか。
「おのれ、あの白クマめが…」
「文字小さいよ! 見えねえよ! 普通の大きさでいいんだってばっ! 極端きょくたんなんだよアンタ!」

 文字の大きさはともかく、アカさんはとてもお怒りのようでした。子供が遊んでもらっているというのに、温かく見守ってあげうという気持ちはないのでしょうか? なんとも心のせまい事です。

「絶対許しませんからね! 絶対許しませんからね! …大切な事なので2回言いました!」
「フルーレさんじゃないけどさぁ、僕も言いたくなるよ。本当にアンタ困った人だね。」

「せっかくさぁ、公式でも結婚システムが導入されたというのに、このままではボクの夢のロードが……。」
「あれ? ウチのプレイヤーって、ラテール引退してたんじゃないの? なんでそれ知ってんの?」
 そういえばそうですね? 確かにそんな話を聞いたような気がしましたが…。日記だって放置してるでしょ。
「なにを言っているのかねキミは。たまにログインして、経験値2〜3%はかせいでるし、公式ホムペも見てるよ。」
「え、そうなの? 見てるの? 僕はてっきり別のゲーム行ってるのかと思ったよ。」

「それも間違ってはない!」
「えばって言う事じゃないと思うけど…。」
 そうなんです。欠かさずチェックしております。それはいいのですが、結婚システムといいますと、相手の合意が必要ではないかと思うのですが、アカさんはそこまで考えているのでしょうか? っていうか、女の子同士じゃないんですか?

「ダマして登録とうろくさせればOKさね!」
「それも、えばって言う事じゃないと思うけど…。っていうか、アンタくさってるよね。心が特に。」

 そんな事でモメている間に…、フルーレさん達は楽しそうですけど…?
「なんだとー!」

「じゃあ、チョーさん。もう少し向こうでお仕事しましょう。」
「ん…、わかた。」

「あんの野郎…。あんの野郎…! 大切な事なので2回言いました!!」
「2回言ってる時点で、余裕よゆうあるように思えるのは僕だけ?」

「とにかくだ!! このままでは結婚どころじゃない! ボクの嫁が略奪りゃくだつされる!」
 アカさんはいままでで一番、頭をヒネりました。本当に一生懸命いっしょうけんめいに考えました。しかし、最強のアンポンタンであるアカさんです。いいアイデアなんかでるわきゃありません。出るのはけむりばっかりです。

「うーむ。なんかいいアイデアはないかね? ピンクピンク君。」
「あれ? アカさん今、名前2回言わなかった? ピンクって2回言わなかった?!」

「重要なので2回言いました。」
「そこ2回言うトコじゃないんじゃないの?! 僕の名前はピンク1回でいいんだよ!」

「重要なので2回言いましたっ!!!」
「なんで逆ギレしてんのっ!? そこ、キレるとこじゃないんじゃいのっ!?」
 話が進まないから、その辺にしておきましょう。それよりも、フルーレさん達があっちに行ってしまいます。ぶっちゃけ、文字数の制限がありますので、そろそろ話を終わりにしたいんですけど…。

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!」
「あー、そうだアカさん。だったらアカさんもフルーレさんの気を引くような事をしてみたらいいんじゃないの? 外見をファッショナブルにしてみるとか。フルーレさん服とか好きじゃない?」


「おー! それだぁぁぁーーーーーー!! とっておきがあるぞーー!」
 そうさけぶと、アカさんは近くにある街、龍京まで走って行きました。それはもうスゴイ速さで。一体、何を思いついたというのでしょうか? ファッショナブルに着替きがえてくるという事なのでしょうか?


 それから5分後………。

「おーい! フレーレ〜!」
「あら? ……これは、アカさんの声ですね?」



「ファッショナブル〜♪」
「ひゃあああああああああああ!!!」

 ……メチャクチャおこられました。

↑UP





その17 「プリンとカッパ」(前編)

「ぎゃー! あれはなんだー!」
「なんだー。」
 「アルカディア」から少し出た先にある、「桜木の湖」まで遠出していたアカさん達3人。いえ、2人と1匹…、いやいや、1人と2匹? とにかく、みんなで遊びに来ていたのです。

「カ、カカカっ! カッパだよ、あれ!」
 チョーさん探検隊たんけんたい隊員たいいんピンクちゃんが見つけたのは、緑の身体と頭のおさら、黄色いクチバシをつけたデブなカッパでした。ヤツはこちらを見つけると、物凄ものすごい顔をしながらおそってきます!

「カッパが現れた! チョーさん隊長、どうする?! たたかう、じゅもん、にげる、もちもの、どれにする!?」
「……ヤツき。」
「おっけい! 突撃とつげきだー!」
 隊長チョーさんの指令により戦闘開始せんとうかいしです。フォーメーションはスペシャルA! アカさんが攻撃、チョーさんがアイテムひろう、ピンクちゃんがアイテムひろう、です! …っていうか、これしかフォーメーションありません!

「ぼ、僕は戦闘員じゃないから戦わないよ! あぶなくなったら速攻そっこうで逃げるよ!」
「……逃げたら射殺しゃさつ…。」
「ぎゃー! 射殺しゃさつキター!」
 なんだか分りませんが、楽しそうな一行。このあたりでは文句ナシに強いアカさんがボコボコにして戦闘終了です。
 ひっくり返ったカッパのわきに転がる袋入ふくろいりアイテムを、チョーさんが黙々もくもくひろいます。

「や、やったー! 勝ったぞ! ははっ! 口ほどにもないヤツだったね!」
「…それ、お前の事。」
 ところで、みんなはナゼこんな所に来ているのでしょう? それをお話するには、フルーレさんの方をのぞいてみましょうかね。







 さてさて、こちらはフルーレさんのいるアルカディア。
 少し前までお仕事の中心だった場所です。最近は来る事もなかったのですが……。

「フルーレ、コノ周辺しゅうへんデノ、仕事ハ終了シタノデハ?」
「ええ、まあそうなのですけど…。実は……。」
 この前、プリンバリン99匹をたおすというクエストをやっていましたけど、その時にアカさん、クエストけるの忘れたんだそうです。パーティをんでいれば、2人で99匹たおせばいいはずなのに、けるの忘れたので、もう1度99匹たおさないといけない…。

「カナリ無駄デスネ…。」
「そういう事です…。」
 しかも、クエスト受けるのわすれた本人は、ココへ来た途端とたん、とっととあそびに行ってしまったのですから、結局けっきょくはフルーレさんがこなさなくてはなりません。こまったものですね。

「仕方ありませんね。ちゃっちゃと手当たり次第しだいに、抹殺まっさつしましょう。」
「実ニ、容赦ようしゃナイデスネ。アナタハ。」
 平和にごしているプリンバリンを、問答無用もんどうむようで倒していく姿すがたは、なんとも殺伐さつばつとしております。でもまあ、仕事ですからねぇ…。プリンバリン達もおそってくる事ですし…。

「あら? これは……。」
 そんな中、たおされて逃げていくプリンバリンが、なにやら武器のような品を落していきました。これは一体……。

「コレハ、すごイ品デスネ。『プリンバリン・ダガー』デスヨ。」
「わ、これってレアレアなユニーク・アイテムじゃあないですか!」
 なんとそれは、すさまじく低確率でしか手に入らない、まぼろしの武器『プリンバリン・ダガー』でした! フルさんはかなりうんがよいようです!

「す、すごい品ですね! 本当に私がもらっていいのでしょうか?」
当然とうぜん権利けんりデス。アナタノ努力どりょくデ、手ニレタノデスカラ。」
 フルーレさんは、その可愛い短剣を空にかざしてみました。やいばの部分が太陽当てられて、キラリと光ります。いつも頑張がんばっているフルーレさんに、とっても素敵すてきなプレゼントがとどいたようです。

 本当に良かったですね。

「たっだいまー! お腹すいたー!」
「……腹へった。」
「僕もポポグル人形食べたいー!」

 ちょうどその時、遊びに行ってたアカさん達がもどってきました。元々もともとはアカさんのクエストだというのに、もはや何の目的で来たのかすらおぼえてないという……。

「アカ様! フルーレガ仕事ヲシテイルト イウノニ!」
「水ポケさん、いいんですよ。」
 遊びまくっているアカさんではありますが、実はフルーレさん、今回はOKと思ってました。だって、チョーさんの遊び相手になってくれるからです。

 ここ最近、ほとんど毎日をゴミゴミしたエリアスで過ごしている事もあり、たまには広い場所で遊ばせてあげたかったんです。(どうせアカさんはOK出さなくとも遊びに行ってしまいますが…)
 それに、元はアカさんの仕事とはいえ、内容自体は簡単です。時間はかかりますけどね。そして水ポケさんもいるのでお仕事に影響もありません。

「…マッタク、アナタトイウ人ハ、ナントイウやさシサ……。ハアハア…。」
「あの…水ポケさん、私を見てハアハアしないでくれます?」
 水ポケさんはフルーレさんが大好きです。やりすぎなほど好きです。…っていうか、こんなキャラでしたっけ?

「まったくさー、変人ばっかりで困っちゃうよねー! あっはっはっ!」
 変人ナンバー1のアンタは、それ言う資格しかくないでしょうに。

「……ピンク。ノドかわいた。お茶だせ。」
「あれ? チョーさん新入りのくせに僕にタメぐち? ちょっとおかしいんじゃないの? 登場とうじょう順序じゅんじょからすると古株ふるかぶの僕が先輩せんぱいなんじゃない? タメ口ってどういう事なの?」

 さて、話がはじまったところもうわけないのですが、話が長くなりそうなので、ここから先は後編です。昔のラテールノベルはもっとみじかかったのです! 最近、やけに長いので、この辺でめておきます。

 しかし、続くのには、それなりのワケがあります。
 後編では、誰もがおどろくトンデモナイ事が…?!

「へい、ボス! お茶でございます!」
「…ん。ごくろう。」
「あれ!? アカさん、なんで子分こぶんやってんの!? チョーのくせに、いつのまにかラテノベのボスに君臨くんりんしてるの? 主人公は? 主人公は僕っていう設定せっていじゃないの!? はげしく傷ついた! めがっさ傷ついた! うったえてやる!」

 いったい何がおここるのか!? 新たな強敵がアカさん達をおそう!?

 ……ってあれ、みんな話聞いてる? いま私が後編の予告してるんだけど…。こういう時に会話しないでくれる? いまとっても大事なトコなんだよね。邪魔じゃましないでくれるかな?

「…さっきから解説かいせつ(作者)がうるさい。……始末しまつせよ。」
「イッエサー! ボス!」

 ぎゃーーーーー!

「ガクガク……ブルブル……。」

↑UP





その18 「プリンとカッパ」(後編)

「さ、これで99匹のお仕事も終了です。お給金きゅうきんもらえますから、夕飯は奮発ふんぱつしましょうか。」
「ハイ。オつかさまデシタ。」

 ……………………………。

「そういえばアカさん達、ご飯食べた後、また遊びに行ってから、もう結構けっこうな時間がってますけど、帰ってきませんね。そろそろ夕方ゆうがただというのに…。」
「キット、夢中むちゅうあそンデイルノデショウ。」

 ……………………………。

「……? なにかおかしいですね? 違和感いわかんがあります。」
「ハイ。ドウイウワケカ、作者ガイナイヨウデス。ソノタメ解説かいせつガアリマセン。」

 ……………………………。

「……なるほど、大した問題ではありませんがたしかに不便ふべんですね。…では、100円のレトルトカレーと、同じく100円のパック白飯を与えてください。それで復活ふっかつするはずです。」
「合計200円デ復活ふっかつトハ、やすアガリデスネ…。」

 イャッホウ! 今夜はゴチソウだ! ガツガツ……ふ〜〜、美味おいしかった! こんなに美味おいしいご飯を食べたのは何年りだろう! いやぁ、満腹まんぷくだ! ご馳走様ちそうさまでした!

 解説かいせつですね? 解説。はいはい、元気に続けますよ。

「ヤケニ リアルデスネ……。」
「その部分にれてはいけません。」
 おや、そうしている間に、アカさん達がかえってきたようですよ。みんなどろんこ姿すがたですが、少しばかり元気がないように見えます。

「またもや、ただいまー! いや〜、お腹すくの早いなぁ。」
「……。」
「早くあやまっちゃったほうがいいよ〜。僕も頑張がんばるからさ〜。」

 元気がないのはチョーさんでした。いつもフルーレさんの前では元気なのに、しょんぼりしています。様子ようすがおかしいですね?

「ご・は・んー ご・は・ん〜 たったららら〜♪」
 ちなみに、アカさんはアンポンタンなので元気いっぱいです。周囲が落ち込んでいるのに空気読めません。もちろん、この子がなやんだ所を見た事ありません。だって、アンポンタンだからです!


「あら、どうしたんですか? チョーさんもピンクさんも元気ありませんね? いっぱい遊んできたんじゃないんですか?」
「……んー。おれ、フルにあやまらないといけない。」
 するとチョーさんはこしに下げているカバンからそれを取り出しました。やや! それはさっき、フルさんが手に入れたプリンバリン・ダガーです。だけど、先っぽがポッキリれてしまっています。

「遊びに行く時、だまって持ってった。そんでころんだられた…。」

 なんという事でしょう! せっかくフルーレさんが手に入れたレアレアなダガーを、なんとチョーさんはこわしてしまったのです。これでは使つかものになりません。

おこられるぞ! 怒られちゃうぞ! あわわわ…、この人怒るとマジこわいよ! アイアンクローだよ! アイアンクロー!」
 どういうわけか一番みだしているピンクちゃんは、無駄むだに飛びまわってあわてています。

「………チョーさん、ヒザ小僧こぞうりむいてますね。手当てしなきゃ。」
「フル…、おれ、悪い子。」
 しょんぼりしているチョーさんの前にしゃがんだフルーレさんは、にっこり笑って頭をでてくれました。

「勝手に持って行ったのは、よくない事ですけど、刃物はもの怪我けがをしなくて良かったです。どうせ、たまたまひろった品ですし。気にしないでください。…ね?」
 そう言うと、泣きそうなチョーさんを、ふわりときしめてあげます。フルさんは小さなお子様にはやさしいのです。

「フ、フルーレさん! 実は僕もオヤツを先に食べちゃった! 明日の分のポポグル人形、食べちゃったよ。ごめんなさい〜。」
「…仕方ないですね。ちゃんと歯をみがくんですよ? 明日の分は、またみんなで取りに行きましょう。」
 あらあら、今度はピンクちゃんまで白状はくじょうしてしまいました。やっぱり悪い事をしたら、良い子はあやまらなければいけません。きっとすごくおこられると思っていたチョーさん、ピンクちゃんも、勇気を出してあやまりました。エライです。とても良い子ですね。

「………じ、実はボクも………。」
「はあ…、アカさんは何をやってしまったんですか?」
 これはめずらしい…。なんとアカさんまでがあやまり始めました。

「うん、実はさぁ、さっきフルーレのパンツかぶって、変態へんたいオヤジごっこして遊んでたらさぁ…。」

 スッパァァァン!…とスリッパの一撃が、アカさんのドタマをぶったたきました。

「なんでたたくのさ〜。それって、おかしくね? 差別じゃね?」
「人のパンツかぶって遊ぶ方がオカシイでしょうにっ!! なんて遊びしてるんですかっ!」


「いまの雰囲気ふんいきだとさぁ、笑ってゆるすのが流れってモンじゃないのかね?」
許容範囲きょようはんいえてます!」


「Oh! ちょいと聞いておくれよ大将! 冒険者の装備そうびとして頭装備は必要なんだよ。」
「パンツはかぶるモノではありませんけどね!!」

「いやいや、そうじゃなくてだよ。僕ら探検隊たんけんたいが遊んでたらさ、あやしいモンスターが出てきたんだってば。」
あやしいモンスター??」

「僕、写真撮っておいたよ!」
「オヤ、コレハめずらシイ!」

 なんという事でしょう!? ガマガエル山麓さんろくに住んでいるハズの凶悪きょうあくモンスターです。見た目に反しておそろしい強さで、LV100でも勝てないという、トンデモナイ敵!

 こんなのが出るなんて、さすがラテール・ノベル。やはり小説版はゲームとは違います。やりたい放題ほうだいです。最近は写真の合成が上手くなりました。

「で、チョーさん隊長を見て、”ロリっ子……ハアハア…”って写真ってた。」
「ひぃー! だ、大丈夫でしたか!? チョーさん!!」
「…ん。問題ない。」
 危ないところでした。アレはどう見ても変質者へんしつしゃです。ハアハア…してるヤツにロクなのはいません。

「何カ 御用デスカ?」
 いいえ…なんでもありません……。

「で、ボクはいい子だからさ! フルーレのパンツ、どうぞって差し上げておいた!」

 スパァァァァン! スッパァァァァン! 2回連続でスリッパでぶっ叩かれました。

「写真られたうえに、おみあげまで差し上げてどうするんですかっ!!」
「ちゃんとフルーレって、名前も書いておいた! そしたら、かぶってハアハア…してたー!」



「いやああああああああああああ!!」

 なんというか、……んだりったりなフルーレさんでした。

↑UP





その19 「どろぬま中華」

諸君しょくん! 今日はこの”エロエロボインわがままボディの女教師が年下のオトコノコをいじめちゃうゾ!スペシャルちっくなアカさん先生”が良い子のみんなに授業をするよ!」
「………。」
「なんですか、その珍妙ちんみょうな名前は。エロエロとか全然関係ないというのに…。普通にアカさんじゃダメなんですか? 」

「ダメです!」

「…おい、そこのエロエロボインわがままボディの女教師が年下のオトコノコをいじめちゃうゾ!スペシャルちっくなアカさん先生…。」
「おお! ちゃんとフルネームで呼んでくれるとは素晴らしい! 何かね? マイ・スチュゥゥゥデンツ、チョー太郎君。」

「………おまえ……馬鹿?」

「なんだとオラー!! ワレなめとんの───ぎゃああああ! No! ノォォォォ!」
 幼児をいじめる悪い先生は、フルーレさんのアイアンクローによって即座そくざにおしおきされました。

「せ、せせ、先生に手を上げるとは何事かね!? 教育委員会にいいつけてやるんだぞ!」
「なんで弱気なんです?」
 アカさんは痛そうに顔を押さえて半ベソかいてます。そんな事より今日はこんな青空教室で何を教えるつもりなのでしょう? 話がまったく進んでいないようですが……。

「そうなのだよ諸君! 今日はこのエロエロボインわがままボディの女教師が年下の───」
「言わなくてよろしい!!」

「つまりだね、本日はラテールではやってはいけない事を勉強しようと思うのだよ。」
「……お前の存在がまず間違ってるな。」

「うるさーーーーーい! ごちゃーごちゃー言うなーー!」







「よし、仕切りなおして授業を始めるぞよ! キミ達はRMTという言葉を知っているかね? では、チョーチョー君、答えてみなさい!」
「………おれ、知らない。」

「はいはい、知ってます。リアルマネートレードの略ですね。」
「うむ! 現実のお金を使ってゲーム内のお金を手に入れたり、アイテムを手にしたりする事だね。」

「……なあ、フル。それやるとダメなのか?」
「そうですね。そういう事をすると、専門でお金をかせぐ業者とかが出てきて、全体的にゲーム内の治安がどんどん悪くなります。それにインフレというゲーム全体でのお金の過剰かじょう状態じょうたいにもなって、色々と問題もんだいが起こってしまうんです。」

「そうなのだ! だからこそ世間的にはよろしくないので、みとめられておらぬのです! それでつぶれたゲームは数知れず!! この前までやってたルナ○ィアなんかそれでもう……。」
「実名は出しちゃだめぇぇぇぇ!!」

 う〜む…、しかし、意外な事にマトモな授業ですね。まさかこの馬鹿なノベルでそういう真面目な話が出てくるとは思いませんでした。
「アカは馬鹿なのにな。」

「ええい! おだまり!」

「……とにかくだ、主にRMTは”中華”と呼ばれるアジア系出稼でかせぎ労働者がやっているとされておるのだ。この写真を見たまえ!」
 この写真に掲載けいさいされているのは、炭鉱たんこうの5Fに24時間いるという掘り集団の一人ですね。(中身ちゃんと確認済)
 こちらが掘ろうとしても、気にせず掘ってしまう礼儀のない人達…。運営も放置しており、一般の方から苦情が出ています。

「ボクがツルハシ持って掘りに行ったら、ヤツら課金ペットでガシガシ掘ってさ、ボクほとんど掘れないんだもん。すげー迷惑だよ。善良な市民のボクがまったく掘れないのは可哀想だと思わない?」

「アカさんが善良かどうかはさておき、それらをオークションで売って換金かんきんしているため、RMTの温床おんしょうになっている、と。……普通に掘りたい人からも迷惑ですしねぇ…。本当に困った話です。」

「あれ? さておき? ボクって善良じゃない? あきらかに善良な市民でない?」
「いえ、あきらかに全然とっても悪い子です。」
「え〜〜!」

「つまりだよ諸君、このエロエロ─(略)─アカさん先生が言いたいのは、RMTはダメだという事さね。」
「本当にラテールノベルで初めての真面目な話でしたね。」
「アカは馬鹿なのにな。」

「ふふん、そんな事言っていいのかな? 中華どもに負けずに頑張ってGetした、この5F鉱石をオークションで売れば、チョー助君の好きなモノが食べられるぞよ。」
「………おれ悪かった。だから、お子様ランチがいい。」
「チョーさんも案外したたかですね…。」


「オホホホホホホホホ、いい気分じゃのー。さて、じゃあボクもオークションに出品してこようかなー。」

「そ、そっちのオークションはダメーーーーーーー!!!」
「やっぱりアカは馬鹿だな…。」

 アカさん先生はその後、たくさんのお巡りさんに囲まれ連行されました。
 …そしてその日どころか、しばらく帰ってきませんでした…。

 さて、今日の授業はここまで!

 今回の授業は、『先生自身が中華になってはいけない』というお話でした。勉強になったかな? いやはや、中華って怖いね!
 じゃあ次回の授業は、アカさん先生が警察から戻ったらにしましょう。

 グッバイ! マイ・スチューデント!

「……次回、おれ授業でないぞ?」
「私も出ませんけど…。」

 あれ? 1回で終り? アカさん先生、1回でクビ?

↑UP





その20 「ミドリガメ大嫌い! 前編」

「……フル、アカがいじめる。」
「ボクいじめてないよー! ちょっとオモチャに接着剤つけておいただけで……。」
「コラー!!」
 いい天気が続くノンキなお昼。そんなステキな土曜日。こともあろうにアカさんとチョーさんがケンカしておりました。アカさんは悪い子なのでイタズラ大好きです。

「ぎゃあああああ! このガキめがー! フザケンナー!」

「今度はどうしたんですか?」
「ボクのお気に入りの帽子が砂だらけになってるんだよおお!」
「……砂のトンネル作るのにバケツがなかった。」

「あらまぁ…。」
 翌日の日曜日は、アカさんが悲鳴を上げていました。チョーさんはお子様ですが、仕返しなんて子供みたいな事はしないので、悪気はないけど、こうなってしまいました。

「なんやオラー! ナメとんのかいな!」
「……ペッ…。」
 翌日の月曜日も、やっぱりアカさんとチョーさんはケンカしております。毎日毎日、何をそんなに怒る理由があるのでしょう? とにかくここのトコロ、二人の仲は最悪でした。

「もー、どうしてそうケンカするんです? この前はちゃんと仲良く遊んでたでしょ。」
「ふーんだ! あの時はあの時だよー。ノリが大切なんだってばさ!」
「……おれ、悪くない。」

「困りましたねぇ…。」
 たまーに仲良く遊んでいるアカさんとチョーさんですが、今日みたく仲が悪い時はとても悪いのです。二人共いじっぱりだったり、素直じゃないトコロがありますから、こうなると大変です。

「いいですか、二人共。☆トキメキファンタジー・ラテール☆というゲームは、そもそも仲良く遊ぶゲームなんですよ? ノベルとはいえ、そこは同じなんですから、もう少し仲良くしましょう。」

「星ラテール星 …つったって、ノベルなんだから違くて当然じゃん。」
「そういう事を言わないのっ!」


「じゃあ、このアザラシ太郎が逆立ちしてあやまったらいいよーん。べろろろ〜ん。」
「……アザラシ言うな、このサル顔。」

「ウキー! なんやとーーー!」
「ストップストップ! やめなさい。アカさんはお姉さんなんだから我慢がまん! チョーさんもちょっと言いすぎです。」

 しかし…、最近は仲が良くなると”結婚”なんてのもできるというのに、時代に逆行するようです。こんなんじゃ、ラテールノベルって痛いね、とか言われちゃいますよ。(←もはや手遅れ)

「とにかく! ケンカはここまでです。これからお仕事なんですから。お二人共、出掛ける用意をしてくださいね。」

「ぶーぶー。」
「………………………チッ。」
 貧乏びんぼうヒマなし。お金のないフルーレさん達には遊んでいる時間はありません。今日はちょっとスゴイ場所へ戦いにいくのです。ケンカどころではないので、早く支度をしましょう。

 さて、今回フルーレさん達が受けた依頼というのは、「シャングリラ」という場所で財宝を守っている巨大亀・玄武を倒すというものでした。
 玄武というのは、超ド級モンスターと言われる程にオソロシイ敵。あの赤龍インヴォーグと並びしょうされる程に凶悪なヤツ。
 これまで何人もの放浪者がいどみましたが、全員が返り討ち。まだ誰も倒していないのです。なにしろ、あのインヴォーグよりさらにデカイという話ですし、しかも亀だもんで甲羅こうらがとってもかたいんです。ダメージなんて当りゃしない。

 しかし、シャングリラには数々の財宝が眠っており、ヤツを倒せば大金持ち。だから皆が狙っているのです。……でも倒せない、と。

「いえいえ、今日は違うんですよ。お友達の皆さんと一緒に行くんです。ほら、赤龍を倒した時にそろった皆さん。あの百人ほどのメンバーで集まって行こうって事になりまして。」

 な〜るほど、そうでしたか。確かにそれだけの人数がいれば勝てそうです。すると、お宝は皆で山分け、というわけですね。その人数で分けても、十分に大金なほど財宝もあるみたいだから、こりゃあ期待できます。

「はい。それでも危険な事には変わりないんですけど……実は、そろそろアカさんやチョーさんにも新しい服を買ってあげたいなって思ってるんです。いままでは、お金がないから買ってあげられなかったでしょ?」

「だからね、きっちり玄武を倒してお金稼がないと。そしたら服を買ったついでに、みんなで美味しい御飯だって食べられちゃいます。…私は、みんなの笑顔が見れれば一番嬉しいですから。」

 なんとまぁ……。

 本当に…フルーレさんはしっかり者ですねぇ。ただのイジられ役ツンデレまな板胸な子だけだと思ったら、そんな死亡フラグまで立てちゃって……。

「誰が死亡フラグですか! しかもその評価、ケンカ売ってるんですか? ああん?」

 いえ! マジでなんでもないです! ぬおおお、この人を怒らせたらマジやべえ!

 ……う〜む、冗談はさておき、フルーレさんは最近、お母さん属性まで手に入れたようですな。アカさんのような不出来な子供を見守るえらい子ですよ。作者も頭が上がりません。


 それに引き換え……、この子達は……。

「…ウザイ」
「だまれクソガキ」

「ふふ……、実はああ見えて、ナカナカ仲がいいと思うんですけどね。」
 よくわかりませんが、そういう事にしておきましょう。とにかく仕事を頑張がんばっていただきたいものです。そしてお金があまったら……、ワタクシにも美味しいご飯を食べさせていただきたいものです!(←本気)









「ギャオオオオオオーーー!!」
 耳の鼓膜こまくやぶれるかと思うような咆哮ほうこうと共に、玄武が倒れていきます!

 な、なんという事でしょう!? 敵地への到着も、緊迫きんぱくした戦闘シーンも、全部スッとばして玄武を倒した所からですか!? せっかくのボスなのに戦闘を飛ばしちゃうの?!

 いやはや…、さすがはラテールノベル…。今回は戦闘メインの話なハズだというのに、すでに戦闘終ってるってスゴイですな。
 …っていうか、それじゃ戦闘メインじゃないじゃん。誰よ、シリーズ最終話はバトルモノだなんて言ったのは!! 間違ってんじゃんよ!

「いやっほい! 終ったぁー!」
 何度も転んで泥だらけ、それに小さい傷もちらほら見えるアカさん。そして周囲には百人を超えるお友達らが勝利に酔いしれていました。さすがにこの人数でフルボッコにしてしまえば、硬かろうが強かろうが、負けるわけありません。確かに時間はかかりましたが、ちゃんと勝利できました!

 これぞ数の暴力!! ……ではなく…、素晴らしい友情パワーです! よい子の味方、☆トキメキファンタジー・ラテール☆的にはそう言っておかないといけません。

「やったね! アカ!」
「Oh! ゴクロウさん。すげー楽しかったさね!」

「フルーレさん、乙っすー。」
「はい、お疲れ様でした!」
 一緒に戦った仲間達が次々と声をかけてきます。みんな、とってもうれしそうな顔。

「よ、幼女……ハアハア……。」
「……変なのが混じってるな……。」

 変なのはともかく、そこはもうお祭りさわぎでした。手持ちの花火を打ち上げたり、エモーションでおどってみたり、無駄に魔法を使ってみたり、…と全員が喜びさけんでいました。

 友達の友達はみんなお友達。色々なギルド、色々な服装、職業、LV、装備など、一つとして同じじゃない仲間が一緒に勝利をかみ締めてます。苦しい戦いだったからこそ盛り上がります。

 ラテールはこういう時、とっても楽しいですよね!

「おーいみんなぁ! あっちに玄武のお宝があるって! 早く見に行こうぜー!!」
 おおっと、いち早く誰かが玄武のお宝を見つけたようです。

 それを聞いた百人は、ぞろぞろとそちらへと向かいました。アカさんとフルーレさんもその集団について一緒に行こうとしますが、あんまりにも人数が多いので、途中ではぐれてしまいました。

「あれー? フルーレはどこ行ったん? 先に行ったのかな??」
 まあ、お宝のある場所に到着すれば会えるだろうと思い、アカさんも集団と一緒に進みます。

 途中、ロープを降りようとすると……、アカさんのトレードマークともいうべき、長がーいおさげを引っ張るヤツがいました。
 おやまぁ、チョーさんですね。この子もフルさんとはぐれてしまったようです。

「……おれロープ使えない。アカ、おんぶしろ…。」
「なんだね、チョー太郎。フル君と一緒じゃなかったのかね?」

「はぐれた。…だから、おんぶしろ。降りる。」
「ほほおぅ…。」
 一人ではハシゴやロープの登り降りができないチョーさん。だからいつもはフルーレさんに頼のですが……いまははぐれてしまい、頼めるのはアカさんしかいません。

 ですが、アカさんはここぞ、とばかりにニンマリと、あくどい顔をしました。何かをたくらんでいるようです。幼児を相手に本気で悪い事を考えているようです。間違いなく鬼です。外道げどうです。

「さぁ〜て、チョーチョー君。ロープを降りたいのかね? クックックッ…じゃあ、今日のオヤツ半分欲しいなぁ〜。くれないかなぁ〜?」
 なんという事でしょう! まさか年下の子にオヤツをねだるなんて!
 私にも少し分けてください!!(←お前こそ最低)

「……フザケンナ。フルの焼いたホットケーキは絶品。誰がくれてやるか。…お前はカタツムリで十分だ。」
「ぬおおおおおおおおお! カタツムリだとおおおおおお!」
 それはアカさんにとって悪夢の食材でした。目にするだけでダチョウより早く逃げられると思います。むしろ考えるだけでジンマシンが出ます。

「おのれ、このシロクマめが…、言ってはならん事を……。こうなればフル君のホットケーキが焼けたら、その場で全部食べてやるからな……フヘヘヘヘ…。」

「……幼児を相手に、いい歳してみっともないヤツ。」
「なーーーーーんだーーーとーーーー!」
 チョーさんの正論攻撃。アカさんは有利な立場にいるはずなのに劣勢れっせいでした。汗がダラダラ流れてました。なんせアカさんはアンポンタンなので、知恵で勝負すると3分でけむりが出るのです。タイムリミット3分です。

 あの、ところでお二人共……。いつの間にやら周囲には誰もいませんけど、いいんですか?
 みんな先に行ってしまって、あなた達だけが残されているみたいですよ?

「……む。おれ達が最後か…。」
「ぎゃふん! ほれみろシロ太郎。お前さんが駄々だだをこねるからだぞ。」

「…お前が大人げないからだ。」
「ムキー! まだ言いやがりますかー!」
 あの…、早く行った方がいいんじゃないですか? モンスターはいないから危険はないでしょうけど、お宝はなくなっちゃいますよ?

「し、仕方がない。…おい、チョーべエ。背中に掴まらせてよるぞよ。」
「……しみったれた背中だが、利用してやる。」

「ウガーーー! なーーーんーーーだーーーとーーー!」
 ほらほら、早く行くんでしょ?! まったくフルーレさんがいないと話が進みませんよ。誰か他にいれば良かったのですが、あいにくと今日は水ポケさんもバイトで来れなかったみたいですし、それにピンクちゃんも……。

 あれ? そういえばピンクちゃん今日はヒマだったはずですけど…、なんで来てないんですか? 水ポケさんみたいにバイトでも始めたんですか?


「あいつは玄武が怖いから逃げた。」
「あいつは玄武が怖いから逃げた。」


 う〜む……。なんか納得………。







「あれー? みんなドコまで行ったのかな〜?…って、おいチョー次郎。いつまで背中に掴まってる気かね?」
「……ロープ多い。いちいち降りるの大変。」

 ごちゃごちゃ言いつつも、みんなとフルーレさんを追う二人でしたが、言い合いをしたり、道を間違えたりで、さらに遅れてしまったようです。敵がいないので安全ですけど、そろそろ追いついてもいい頃なんですよね。まだでしょ うか?

「……アカ、そこのワープゾーンで最後。とっとと入れ。」

「ええい! 命令すんなっ! 見りゃわかるわい!」
「お前、いま素通りしただろ。」

 おのれ…ナマイキ幼児め…などと思うアカさんでしたが、ここで反論しても、いま思いっきり道を間違えたのは自分なので、言い返せないと黙るしかありませんでした。屈辱です。絶対にホットケーキ全部食ってやる!…とムカムカしながら思ってました。
 アカさん、なんだかチョーさんと同レベルです。…っていうか、少し下です。

 さてさて、とうとう辿たどり着いたのは、まばゆい光に包まれたサークル。お宝の場所へといくためのワープゾーンです。放浪者であるアカさん達には馴染なじみみ深い移動手段ですね。

「やっほう!! ワープでジャーンプ!! わははははは!」
「……やっぱりアカは馬鹿だな。」
 きっとこの先に全員がいる事でしょう。アカさん達は一番最後、おくれて到着とうちゃくしつつも追いつく事ができました。
 はい。そうです。確かに追いついたのですが………。



 そこに広がる光景に、二人は言葉を無くしました────。

「な………、なんだ…………これ………。」
 さすがのアカさんも目をうたがいました。あまりの異常いじょうさに動く事もできませんでした。
 背中のチョーさんはおどろきで声も出ませんでした。そして身体もふるえていました。



 だって、

 だって、

 アカさんとチョーさんを除く、百人以上もの仲間の全員が、



 殺し合いをしていたからです。



「この財宝は俺のものだーーーぁ!」
 戦士の一人が赤く血走った目をしながら、近くにいる人へ剣を振り下ろします! 斬られた相手は、大きな傷を受けたというのに短剣で反撃! 容赦ようしゃなく必殺技で返します!

「宝にれるな! みんな焼け死んでしまえ!!」
 そのとなりでは、身体に矢が刺さった魔法使いが範囲魔法「ファイアーストーム」を使い、誰彼構だれかれかまわず攻撃! 炎で火達磨ひだるまになった相手は悲鳴を上げますが、それでも立ち上がり、他で戦う誰かを銃でちまくります!!

「財宝は私だけのものよ!! 私以外は全員死ねええ!」
 そして銃を撃っている人を、横からファイターがなぐりつけました。その場にいる全員が、問答無用で戦いを……殺し合いをしていたのです! 

 あんなに仲がいい友達が、みんなで頑張って玄武を倒した仲間達が、異様な目付きになって戦ってます! 傷を負い、倒れながらも、それでも近くの者を倒そうと起き上がろうとする……。

 とても酷い状況でした。

 エリアスの闘技場で行われるバトルロイヤルとはまったく違う、尋常じんじょうではない戦いが繰り広げられていました。全員が本気で戦っているのです! 本当に、本当の殺し合いをしているのです!


「な、何が……、何が起こってるんだよ!!」
 さすがのアカさんも混乱こんらんするしかありませんでした。冗談じょうだんだらけのアカさんですけど、こんな状況でボケていられる子ではありません。大切な友達が傷つけ合っているからです!

「やめろっ! こら! やめろよ!!」
 近くで戦うモヒカンのファイターを止めようとしますが、真っ赤な目で誰かを剣で攻撃します。アカさんの声が耳にとどいていないようです。それどころか、アカさんにも攻撃してくるではありませんか!

「お、おいっ!」
 なんとか槍で防いだアカさんでしたが、モヒカン君は攻撃を止めずにおそいかかってきます。アカさんは彼を知っています。アカさんよりLVは低いけど、髪型に似合わずやさしいやつでした。とてもこんな事をするようなやつではなかったはずです!

「渡さない……! この宝は……僕のものだぁぁ!!」
 しかし、その目付きが尋常じんじょうではありません。赤い目をしていたのです! 彼だけでなく、その場にいた全員が同じような赤い目になり、宝は自分のものだ、と声を上げています!

 宝は自分のもの。それが共通の言葉。

 それはあの、玄武の宝という事でしょうか? みんながそれをうばい合っているのでしょうか? さっきまで協力し合っていたというのに、なぜ、こんな状況じょうきょうになっているのでしょう? わけがわかりません。

「あ、そういえば……!」
 ふと、アカさんの脳裏のうりよみがえるものがありました。それは、龍京の街にいるシャオさんの話でした。
 玄武…シェンウが強大になりすぎたため、倒すのに協力して欲しいと言っていた気がします。

 やはり、こうなっているのは、玄武の仕組んだ事だというのでしょうか?
 力を得た玄武は、倒されてもまだ、それだけの妖気を残している、という事なのでしょうか?

「……アカ! フル探す!」
「はっ! そうか! フルーレもいたんだ!」

 アカさんが思案していた時、チョーさんが背中から小さい声で言いました。はぐれてしまい、先に来ているはずのフルーレさんなら、何か知っているかもしれない、と。アカさんは今考えても仕方がない、とフルーレさんを探す事にしました。

 ……だけど、アカさんもチョーさんも、同じ心配をしていました。

 フルーレは無事だろうか? 戦いに巻きこまれてはいないか? 怪我けがをしていないだろうか? 

 もしかしたら、周りのみんなと同じようになったりしてないだろうか?
 考えたくはないけれど、どうしても心配で仕方ないのです。

「……そんな事、あるわけない。」
「そうだ! あるわけないぞ!」

 ラテールはみんな仲良く遊ぶゲームです。楽しく話したり、変なエモで遊んだり、クエストだらだら遊んだり…、そんな気楽なゲームなはずです。

 だったら、こんなのはおかしい。おかしいではずでしょ?

 ラテールですよ? ラテールなんですよ? 友達同士で本気の殺し合いをするだなんて、こんな事あるわけがないのです! おかしいじゃないですか!?

 きっと、みんな目を覚ます。正気に戻る。
 そう思いながら、アカさん達はフルーレさんを探すために、この戦場へと突入していきます!

「俺の宝を横取りする奴はみんな死んじゃえ!」
「あの宝は私のものよ! 誰にも渡さないわ!!」
「邪魔をするなら殺してやる! お前らなんかに渡すものか!」

 この恐ろしい戦場を、狂気の渦巻うずまく中を、フルーレさんを探して必死に駆けるアカさん。だけどそんな時、知り合いの3人が殺し合いをしているのを見かけました。仲良しギルドのいつも一緒にいるグループ。頑張ってギルドを大きくしようって言ってた。

 だけど、戦っている……。口々に相手をののしりながら、傷つけ合っている…。


「失せろ! 失せろ! 失せろ! あんたは消えろぉぉ!!」
「ふざけるなっ! 宝に触れるな! お前は敵だーー!!」

 先日、結婚システムを使った不気味なくらいシアワセそうにしていた2人…。アカさんが冷かしたあの2人が、お互いを銃で撃ち合い、血を流していました。


「お前も宝を狙ってるんだろ?! じゃあ死ねよおおおおおおお!」
「ギャギャッ!」

 とても仲良くしていた女装好きな魔法使い君と、ペットのペリカンちゃん…。なのに魔法使い君の杖が、何度も何度も…、なんの躊躇ためらいもなくペリカンちゃんをなぐりつけていました。


「なんだよこれ……。ううう……、どうなっちゃったんだよぉ!」
 全力で走るアカさんの目から、知らないうちに涙があふれていました。ポロポロと涙を流していました。
 あんなに仲良くしていた友達が、なんで、どうして殺し合いをしなくちゃいけないのか? さっきまで、ほんの少し前まで仲良しだったのに!!

 背中にしがみついたチョーさんが震えていました。口では強がっても、まだまだお子様。こんなヒドイ光景を目にして、平気なわけがありません。怖くて怖くて、だけどそれ以上につらくて……、悲しい。

「おい、チョー次郎! だいじょーぶだぞ! フルーレがこんなのになったりしない。いま探してるからな。もうちょっとだ!」
「……………。」
 背中にひっついたまま、うなずくのが精一杯のチョーさん。震えていても、好きな人がいるところまで頑張るのです。怖くてもつらくても、一生懸命に耐えてみせます。

 そして、それを支えるのがアカさんです。いつもダラダラしてますけど、こういう時、誰よりも強く心を持って立ち向かいます。
 いままでずっとそうだったように、ラテノベのバトル話ではいつも全力で敵を退けてくれます。それは誰よりも強い、友達を心配する気持ちがあるからです。立ち向かう勇気を持っているからです。

 大丈夫、フルーレは絶対に大丈夫だ!
 そうやってチョーさんに勇気を分けながら、自分も大丈夫だって思うのです。


 だけど、


 この時だけは、


 アカさんの勇気が、砕け散りそうでした。






「ククク……。財宝は、私のもの……っ!」
 彼女の放つ氷の魔法が周囲の全てを巻き込み、凍らせて、戦う人達に襲いかかります。次々と解き放たれる氷の結晶は剣となって突き刺さり、何人もの友達が倒れました。

「キサマなどに! 俺の財宝を渡してなるものかぁ!」
 一人のブレイダーさんが双剣を振りかざし、彼女に襲いかかります! しかし、その行く手をいくつものシャボン玉がさえぎり、彼がそれに気を取られたすきに、頭上からの広範囲の氷刃が強烈な一撃となって、容赦ようしゃなく切りきざんでしまいました!
 ブレイダーさんは近寄る事さえできず、傷だらけになって倒れたのです!

「財宝は……渡さない……! 誰にも渡さない!!」
 その氷のような瞳は、魂がふるえあがるような、底知れない冷たさを宿やどしていました。そして近づく人達へと攻撃を仕掛けていきます。

 アカさんは、もう呆然とするしかありませんでした。きっと彼女なら平気なはずだ。きっと彼女ならこんな事はしない。フルーレは大丈夫だ。そう思っていたのに……。



 後編へ続く……。

↑UP





その21 「ミドリガメ大嫌い! 後編」

 ゲームでなら大丈夫でした。

 玄武を倒した後、ヤツの呪いでオカシくなっても、シャオさんと戦う事で正気を取り戻す事ができました。 いままでは、まったく問題なかったのです。
 だけど、このノベルではちがう方法で戦いました。
 大人数でいどんで、シャオさんには手伝ってもらいませんでした。
 だからちがってしまったのです。こんな事になってしまったのです。

 友達同士で剣をまじえ、友達同士で魔法をびせ、友達同士で傷つけあう。
 そんなかなしい光景こうけいが広がっていたのです。

 そして、仲良しであるこの二人にも、それはひとしくおとずれてしまうのでした…。。

「財宝を狙うヤツなんて、消えてしまえ!」
 目を赤く光らせるフルーレさんは、 なんの躊躇ためらいもなく、必殺の大魔法アイスストームを使います!

 彼女の周囲しゅういはたちまち氷つき、それぞれ戦っている何人は大ダメージを受けました。しかも、その範囲魔法からのがれようと走る人達は、足元がすべって、お互いに頭をゴチンとぶつけて大ダメージ。…これはたまりません。
 そしてそんな中でも続く同士討どうしうち……あまりの苛烈かれつな戦いに、バタバタと倒れていく仲間達…。

 仲良し同士だというのに、全力で戦っていた戦士さん達がフルーレさんの魔法に耐え切れず倒れます。その横では、ペットのミドリ竜、レクス君を攻撃していた飼い主の戦士さんが、一緒に氷漬けになりました!

 もう見境みさかいなどありません。フルーレさんは本気で自分以外の全員を倒すつもりなのです。
 玄武にあやつられたまま、真っ赤な瞳を燃やして攻撃を仕掛けてきます。

「こ、こらー! フルーレ、まじでヤメロってばっ!」
 アカさんの声が聞こえているのでしょうか? フルさんはこちらへとするどい視線を向けると、ニヤリと笑って攻撃魔法をとなえ始めました! 次々と地面から突き出すアイススピアー。まされた槍のようなやいばがギラリと光って飛び出して、その場にいる人達にまとめてダメージを与えていきます。

「アカ、あっち逃げろ。」
「わかってらー!」
 いまだにアカさんの背中にいるチョーさんは、逃げるのに精一杯なアカさんの代わりに、安全な逃げ道を探していました。

 本当はチョーさんだって泣きたいのです。いつもみたいに、フルーレさんに甘えていたいのです。
 だけど、いまは無理だから、早く元に戻ってもらいたいからとアカさんに協力します。

 ……しかし、そんな二人の想いとは裏腹に、フルーレさんは攻撃の手を休めません。そして、ちょっとのすきさえ見せません。全ての攻撃が散漫さんまんなようで、実は逃げにくい場所へと追い立てられている。ちゃんと計算されているのです。アカさんがおサルさんのように身軽でなければ、もうとっくにやられている事でしょう。

「ウキー! あのミドリ亀め〜!! フル君を助けたら今度こそベコベコのギタギタにしてやるんだからな!」
「…お前、相変わらずサルだな。」
 アカさんは余裕もないのに文句をならべます。くやしくてしょうがないのです。大事な友達をこんな風にされて、だまっていられるわけがありません。でもギャグも忘れてません。そのへん、まだ余裕よゆうが見えます。

 ですが、ギャグかましてる場合じゃありません。余裕かましてる場合ではないのです。とんでもない連続攻撃を避けまくっているので、今日の消費カロリーはとっくに使ってしまいました。なんと過酷かこく強制きょうせいダイエットなのでしょう?

「ヘイルストーン!!」
 再びフルーレさんの攻撃魔法、それは空から氷のかたまりを雨のようにダバダバ降らせる魔法です。もし当たったら痛いじゃすません。マジで泣きます。

「ぎゃーーーー!」
 さけび声を上げつつも、なんとか避けたアカさんでしたが、次の瞬間───、
「オマエも倒れろぉ!!」
 なんと、友達のLV100のウォーロードさんが必殺技を使い、アカさんを攻撃しました!! そうなのです。ここは乱戦ですので、フルーレさんだけを注意していてはダメなのです! フルーレさんは攻撃を避けられても、アカさんをうまく誘導ゆうどうしていたのでした。

「やばいっ!」
 さすがのアカさんもこれでは避ける事ができません!! 超とんでもない威力の一撃が襲います!

「アカ! ありがたく思え。」
 そこで力を貸してくれたのはチョーさんでした。ペットは飼い主さんの能力をUPさせてくれる力があります。普通以上のパワーを与えてくれるのですが、いつもチョーさんはフルーレさんだけに能力UPさせています。それを、アカさんにも使ってくれたのです。

 ……間一髪かんいっぱつ!!
 能力UPした事で、いきなり素早くなり、なんとか必殺技をけられました。

 アカさんは間髪入れずにウォーロードさんの背中をります! すると体制をくずした彼は、こおった地面にすっ転んで、つるつるとすべっていきます。しかも途中とちゅうで何人も巻き込んで、つるつるつるつると先の方まですべってしまいました。

「うひょおー、ありゃ楽しそうだね! ボクもやりたいな〜。」
「……ふざけろ。そんなのいいから、フル助けろ。」
 そうです。いつまでも余裕ぶっこいていてはいけません。いまはフルーレさんやみんなをを元に戻さなければならないのです。そうしなければ、玄武の財宝が手に入りません。私にもくれる約束だったのに! 私にくれる約束だったのにっ!!(大切な事なので2回言いました。)

「……おい、解説…。お前ちょっと後で集合しろ…。反省会だ。」
 ひぃ! すごくマジメに2回言ったらチョーさんににらまれました。ヤヴァイくらい恐ろしい目でした。

「ぬぬぬぬぬ〜〜〜! おい解説っ! いいや、作者っ! ちっと聞くけど、このままボクら負けたらどうなるん? 逆にフルーレ倒したらどうなっちゃうんだ!?」

 あ、はい。普通に死にます。

「……は?」

「いや……だって普通はさ、HPが0になると街の石碑に戻るんじゃない? そういうゲームだよねラテールって。まさかラテールでこれ以上の殺伐さつばつやらないよね?」

 いえ、死にます。

「いやいやいや、前にそう言ってなかった? 死にませんって。」

 あれ? そういう設定でしたっけ?

 よくおぼえてませんけど、一応はゲームと違って”ノベル”なので、死んだらそのままです。死亡です。
 そしたらドラゴンボールもないので生き返らないでしょ? 仕方ないので死亡という方向で…。

「おいおい、ちょっと待ちなよクソ作者…、そういう大切な事は、まず赤龍バトル読んでから言おうな。よく見れ、書いてあるでしょ? ちゃんと書いてあるでしょ? 何があっても石碑に戻るって。」
「……書いてあるな。」

 さあ、記憶にございません。


「ふ ざ け ん な ー ! ! ! ! 」


「財宝を狙う者は逃がさない! 行け! バブルバブルッ!」
「ぎゃーーーー!」

 まったくいそがしいったらありません。怒涛どとうの攻撃を逃げ回るアカさんは、文句を言うヒマもないのでした。

「誰のせいだー! うぎゃはー!!」
「アカ! 余所見よそみすんな、左だぞ! …逆だ馬鹿、ハシを持つのが右で、茶碗ちゃわんを持つのが左だろ。」
 いやー、はっはっはっ、お二人とも大変ですねー。

「くそー! 解説のくせにナマイキな! 夜道に気をつけ───って、あっ! そうだ!」
「………なんだ?」

れ! ヘイルストーン!」
「のはーーー!!」
 アカさんのヒラメキの声を上げた瞬間、フルーレさんの攻撃魔法ヘイルストーンが炸裂さくれつします! するどい氷のやいばがいくつもの破片はへんとなり、すさまじいいきおいでアカさん達にそそぎます!

 今度も間一髪でセーフです。しかし避けるだけでは元に戻せません。フルさんや他の友達を救うにはどうしたらいいのでしょうか? 私、作者なんですが書いているのにこの先がわかりません! マジでどうしたらいいの!? どうやってオチをつけるのでしょう?!

「あっはっはっ。あわてる事ないのだ解説よ! ボクってばすっごい攻略法を思いついたんだ!」
「………?」
 なんだか分かりませんが、アカさんが突然、大笑いして余裕かましてます。変なモノでも拾い食いしたのでしょうか? それとも変態さんになってしまったのでしょうか? …ああ、アカさんは元から変でしたね。失礼しました。

失敬しっけいだな! いいかねチミ! 名案があると言ったのですよ。名案が!」
「……ちっ、アカのくせに身のほどを知れ。」
「お前ね…。」
 …と言いつつ、チョーさんは背中から顔を向け、聞く気まんまんでアカさんを見ますが…、そのアカさんは両手をコシに当てて余裕のままです。しかしなんですか? その名案というのは?

「ふふーん。答えは簡単さ! パソコンの電源を落としちゃえばいいんだよ。」
「……???」
 は?

「プレイヤーいるんだからさ、パソコンの電源落とせば強制終了できるやん。そうしたら戦う前まで巻き戻しされて、キレイさっぱり元通りだよ!」
「…お前、ノベルでやっちゃいけないような事を普通に提案するな。」
 う〜ん。前回の課金POTといい、今回もそういうネタですか…。

 しかしそんなんで本当に───ってあれ!? なんと他プレイヤーさんがすでにためしているようです。パソコンの電源を落とせばキャラがログアウトできる、そう考えた人もいるようです。おお! しかもちゃんと消えてるー!

「ほーらみろー!」
「…ここまでの雰囲気ふんいきぜんぶブチこわしだな…。」
 おやまあ、どうやらそれって正解のようですね。強制的にログアウトする事でこの状態を抜け出しているとの情報が入っています!!
 しかし皆さん、くやしい思いをしているようです。財宝を目前にしているというのに、キャラが勝手に戦ってしまうなら、それしか手がないというべきでしょうか?

「ほらみなさいよ! ボクってばえてるじゃないのさ。ボクらもさっさと───うわぁ!」

 うろたえるアカさん、しかし右前方よりフルーレさんがバブルバブルの魔法を飛ばして来ました! ジャンプして避けるものの、そのうちの一発に当たって跳ね飛ばされてしまいます!

「うちのプレイヤーは何やってんのさ! さっさと電源落とせばいいだけやん! 早くし……痛てっ!」
 いつの間にか、アカさんの右腕が赤くまっていました。うまく逃げていたと思ったら、まだ残っているだれかの攻撃が命中していたようです。

「…おい、ばかアカ、一応は心配してやるぞ。」
「うおおおおおおお! だいじょうぶに決まってらーーー!」
 思わぬダメージでしたが、アカさんはフトコロから残っていたダブルクッキーを取り出し、バリバリ食べます。…すると、またたく間に回復してしまいました。それどころか傷もまったく残っていません。さすがにゲームです。都合つごういいです。

「……本当にブチ壊しだな。なにもかも。」
 その辺を深く考えたらオシマイです。

「ふふーん。チョーのくせに細かい事を心配すんじゃねーやい! …それより何やってんだよ解説! あんた解説でプレイヤーで! 作者でしょうが! 早く電源落とせよ! コンセントひっこ抜けー!」
 えー! ダ、ダメですよ。最近うちのパソコンってば、起動中にガショガショって変な音してるんだもの。そんな事したらマジで壊れます。無理ですんでカンベンしてください。

「そんなの平気さね。あれじゃないの? 最近はやりのトランスフォーマーってヤツじゃない? 車とかが人型ロボットになるやつ。きっとパソコンも変形するために音してるんだよ。」
 いえ、ロボットになるとか言われても普通に困るんで。ロボットに変形して、それでどうしろっていうの? …むしろ、ごく普通のパソコンじゃないと使い道ないんじゃねえの…? 
 っていうか、そもそも壊れたらイヤなのでイキナリ電源落とすのイヤです。

「…ぺっ! これだから貧乏は…。みみっちいヤツだな…。パソコン1台くらい笑って壊せ…。」

 いや、そりゃ貧乏だけど、笑ってパソコン壊すとか明らかにオカシイし! それどころか笑い事じゃなくてパソコン壊れたら困るでしょ! 第一、ラテールできなくなるよ! パソコン買い直すお金ないから! ラテールノベル終わっちゃうよ? キミ達の出番これで最後だよ?

「残念でしたー! ボクらはいろんなゲームに顔だしてるんだもんね。ここでラテールが終わっても、ボクらはちっとも困らないー。」
 いやいや、で、でもさ、チョーさんは違うでしょ、元々がラテールの課金ペットなんだし! ラテノベ終わったら出番なくなって困るんじゃないの!?

「……別に構わないぞ? 何言ってんだお前。」
 あれ? 普通はノベルとか漫画の登場キャラって、「出番くれて、ありがとう!」みたいなトコあるじゃない? なのに出なくてもいいと思ってる…? 

「あっはっはっはっ! いいからとっとと、パソコン投げ捨てろー! おらーーっ!」
 ギャーーーーー! 待って待って! ここ2階だよ! 電源落とすだけで、なぜ投げ捨てるって話になってんだー!! NOぉぉぉぉぉーー!



「いくぞ! これが最後の戦いだ!!─────
「…アカ、それなんて週刊少年ジャン─────

 ぎゃああああああ! ちょっとやめ─────

















 数日後………。



「ほれみろ、やっぱし元通りじゃんさー。」
 無茶してパソコンまで外に投げてて完全破壊。そして強制ログアウトの末、みんな正気に戻りました。
 なんとかパソコンを買いなおして正真正銘の超貧乏です。お財布さいふスッカラカンです…。
 なんという強引ごういんな解決方法なのでしょうか?! 私なにか悪い事したでしょうか? コンチクショー!!

「ん、どうしましたか? アカさん。」
「いいや〜、なんでもない。なーんでもなーい。」
 実はフルーレさん、あの時の事を覚えていません。玄武と戦う前まで巻き戻されたようで、アカさんとチョーさん以外は忘れているようです。でも、わざわざ言う必要もないので、二人はとっとと忘れる事にしました。教えても仕方ないもんねぇ。

 結果的に負けにはなりましたけど、それはまた今度別の方法で倒せばいいわけですからね。

「次回こそは、ギッタギタのチョボンチョボンにしてやるわい!」
 なんすか、そのみょうちくりんなポチョンってのは…。

「なんの話です??」
「なんで〜もナイよーん!」


「おーい、アカ〜! 久しぶりだなー」
「うーっす! おひさ〜! 今度一緒に玄武いこーなー!」
「玄武か〜、固いんだよねーあいつ。」

「あ、フルーレさ〜ん、やっほー!」
「こんにちわー。お久しぶりです。」
「ねえ、新ファッション見た? あれカワイイよね〜。」
「いいですよねー。今度、試着にいきましょうよ〜。」
 今日もポカポカのいい天気。空は広くて空気はんで、とっても気持ちの良い日和ひよりです。パソコン買いなおすまでINしなかったものの、復帰ふっきして久しぶりのエリアスの街を歩けば、全部がいつも通り。この前ご一緒した友達も元気に冒険に出かけています。何もかもが元通りでした。

 …良かったですね、皆さんは!

「まだ言ってるよ…。」
「なんだか分かりませんが、そのうち機嫌も直るでしょう。…あ、それより今日のお仕事はですね……。」
 復帰したとしても、アカさんとフルーレさんの日々は変わりません。相変わらずの貧乏で、相変わらず大変なのです。

「ぎゃああ! なんだよあれ! 見たことないよっ!」
「…お前も本当に相変わらずだな…。」

「あれは…、先日の大型UPデートで実装された敵のようですね。」
「めんどっちいなー。任せるよ〜。」
「アカ様モハタラカナイト、飯抜メシヌキニサレマスヨ。」

 おやおや、また新しい敵に新しいMAPですね。今度はどんな戦いが待っているのでしょう? そして彼女達はいつまで貧乏なのでしょう?

「た、確かに貧乏です。……でも、楽しいですよね?」
「そうさね! 桃太郎をイジメるのが、たまらなく愉快ゆかいだよね。ププププ…。」
「ふざけんなナラ! どういう虐待ぎゃくたいだよ! うったえてやる!!」

「……おれ、腹へった。」
「チョーサン。モウ少々デ昼食デス。我慢ガマンシマショウ。」

 そうです。これからもずっと、こんな楽しい毎日が続きます。
 このトキメキは消える事がないのです。


 だってトキメキファンタジー・ラテールは、そういうゲームなんだもの。



 そうでしょ?























「…ちょっと待て。勝手に終わるな。」
 あれ、なんですかチョーさん。何か御用でも…?

「フル助けるとき、言った。…お前これから反省会だ…。」
 ちょ! 待って! なにそれ? マジですか? マジマジですか!? またまたぁ、チョーさんも冗談キツイんですから。さっさと終わりましょうよ。…ね?



「…おい、アカ。射殺しゃさつを許可する。」
「おっけいボスっ! バイバイヒー!」



 ギャーーー!



↑UP





その22 「アイ・ラブ・ラテール!」

「Oh! Yahoo〜! 宇宙的大人気のアカさんでーす!」
「こんにちわ。なにがどう宇宙的なのかはげしく疑問のフルーレです。」
「いや〜まったく、前回はヒドイあつかいだったよ! もう一回パソコン壊してみるか!」
 ひぃー! やめて〜。窓から落としたんじゃないけど、マジで壊れて大変だったんですから。

「パソコン本当に買いましたものね。ご愁傷様しゅうしょうさま…。」

「さぁて、諸君! ラテノベ終回! 涙と感動のフィナーレどうでしたかー!?」
「え”………?」

「いや、最終回だよ? あれで終わり。……続くと思ってた? 普通に最終回でした!」

「ちょっと!! ちょっと待ってくださいっ! 先日、ホムペで続編やるかのアンケートやったじゃないですか! あれは一体ナンだったんですか!?」

「やりましたねー、アンケート。継続かどうか聞いたところ、なんと一人が9票も入れてくれるという…。」
「ち、違います! ちゃんと9名からの希望があったんですってば!」

「いやいや、絶対9人もいないって。読んでる人そんなにいないから。自信持って言えるから。そういうわけなのよ。」
「なにがそういうワケなんですか! 理由をちゃんと話なさい! 全然わからないじゃないですか!!」
 フルさんのいかりが頂点ちょうてんしました。おそろしいパワーにより、アカさんのほっぺたは左右に限界げんかいまで引き伸ばされます。まるでゴムのよう。…しかしこれがまた面白いように伸びますな。いやはや、こりゃあ愉快愉快ゆかいゆかい

「Oh! NO! のびる! のびちゃう!! ほっぺたノビルヨ! TASUKETE!」
「もー、どうしていきなり最終回なんですか! ちゃんと話さないとダメじゃないですか!」

「え〜、いいじゃんさー。どうせ作者もかったるいとか思ってるんだし。」
「そんな事も思ってませんってばっ!」
 うんうん、そんな事は思ってません。面倒くさいだけで…。

「おんなじでしょ!!」

「いや〜ズバリ言うとさぁ、キャラが好きでもゲーム自体に興味きょうみなくなったら、書けないっしょ。」
「うう、それはまたズバリですね。ぶっちゃけすぎですね。」

「世界観はホントに大好きなんだよ? 着せ替えだって楽しいよ? だけどねー、ゲームがLV上げだけじゃね〜…。」
「う〜ん。そうですねー。毎回毎回MAPだけ追加されても、やる事は同じですからね…。」

 ラテール市民から命狙われますので、まじでヤメテ…。

「まあ、そういうわけでラストは、登場した皆様からお言葉でーす!」
「なしくずしに終わるつもりですね。」


「じゃあボクは面倒なんで、ヨメのフルーレからね。」
「誰がヨメですかっ! はぁ…、フルーレです。まさか最終回だなんて…。せっかく元に戻ったのに…。すっごく納得なっとくいかないのですが、ご愛読あいどくいただいた皆さんには感謝かんしゃしても仕切れません。本当にありがとうございました。」
 フルーレさんはぺこりと頭を下げました。わー、パチパチパチ…と、いつの間にか集合していた登場キャラさん達が一斉に拍手しました。

「ひゅーひゅー! そぉら、げー!」
「おだまりっ!!」


「はい、じゃあ次は水ポケモンさんですね。どうぞ。」
「…その名前なんとかしようよ。最後までそれかよ。」
「うるさい! ほら、だまる!」

「ハア、ワタシデスカ…。トテモ脇役ワキヤクノヨウナ気ガシマシタガ、実ハ意外ト活躍カツヤクサセテイタダキマシタ。カタカナ会話デシタガ、オツキアイイタダキ、感謝カンシャデス。」
「水ポケさん、お疲れ様。お世話になりました。」

「今後とも生活費をかせいで、ボクらを楽させてください。」
「こらー!!」


「以上でキャラのお言葉終わりで───…」
「ちょっと待ってよ! 僕がいるでしょ!? どういう事なの? イジメ? これイジメなの? なんて虐待ぎゃくたいだよ! うったえてやる!!」

「おやおや、モモヒロシ。…お前いたのかい。」
「なんだよそれ! なにそのヒロシって! もうモモとか関係ないでしょ? 全然まったく関係ないでしょ!? そもそも僕の名前はピンクだよ! 何がどうなるとヒロシ付くんだよ!」
「さぁ……?」
「さぁ?じゃねえよっ! 」

「ふん、だ。…どうせノベルやめるのは、僕の名前のネタ切れだからなんじゃないの? どうなの?!」
「うん。実はそう。」
みとめちゃだめでしょ! そこ認めたら何もかもオシマイだよ!」

「いや、しぶっても実際じっさいそうだし…。それが一番の理由だし…。いやマジで。」
「なんだよそれ! そりゃないよ!」

「話…長いな……。桃。」
「やや! ぼ、ボス! ぬぬぬ…最後に出てきたくせに……。幼児のくせに…。僕の人気を…。」

「あらまあ、チョーさん。待ってたんですよ。ラテノベ最後のご挨拶あいさつなんですって。少し皆さんとお話しましょう。」
「フル…。」

「どうしました?」
「…おれ、腹へった。」
「ふふ…。それじゃご飯食べにいきましょうか。…では、皆さん。またどこかで会いましょう。」

「あー! ボクも行くー! ご飯食べる!! やい、チョー次郎、フルーレと手をつなぐなんて100万年早いぞ、頭下げて後からヘコヘコ付いてこいや。」
「……ふざけんな。お前がやれ。」

「なんやー! ナメとんのかー!」
「ちっ…。」

「も〜、ケンカしないの! さあ、水ポケさんも行きますよ。」
「ハイ。オトモシマス。」

「おら、ピンクピ! もたもたしてると置いてくぞー。」
「ちょっとアカさん! いまピが多くなかった? ピが多かったんじゃないの??」

「そんな事ないよ。ピンクピン。」
「あれ、多いよね? 今たしかにピンって付けたよね? なんで名前がハミ出してるの?」

「ボクいい子だからそんな事いわないよ。ピンクピンクピ。」
「おっと、やっぱしオカシイんじゃないの? いま2回言ったよね? いま確かに2回言ったよね? しかも言った上にまたピがハミ出てたよね?」

「は? ぜんぜん言ってないってばさ。…お前の耳がおかしいんでないの?」
「オカシイのはアンタの頭だよっ!!」

「二人とも〜、置いていきますよ〜」
「…腹へった。」

「わー! ちょっと待って〜〜〜!」
「僕はポポグル人形がいい!」







 お し ま い 。













「……………。」













「幼女…、ハアハア…。」
 変なのが、カメラ持って付いていきました。






    トキメキファンタジー・ラテールノベル Fin ?






 【ラテノベ本当の”あとがき”】

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
 ラテールノベルは、これにて終了です。

 アンケートやコメントで続投発言しましたが、よくよく考えた結果、やっぱりここで終ることにしました。
 投票いただいた皆様には申し訳なく思います。

 続けようと思えば続けられたのかもしれません。
 しかしながら、僕自身がラテールを完全にやめてしまった以上、続けるべきではないと思いました。

 キャラや世界観は本当に好きです。本当に本当に好きなんです。…だけど、100%の愛が注げないのにダラダラ続けるのはイカンと思いました。…だからここまで。

 …でもまあ、アカさんとフルさんは、僕がMMORPGで遊ぶ時の名前に使う事が多いので、別ゲームの日記などで登場するかもしれませんねー。彼女達とも、しばしのお別れかな?



 楽しい時間をありがとう。トキメキファンタジー・ラテール!
 出会えてよかったです。





 それじゃーねー!

↑UP




トップへ戻る